年月も いまだ経なくに 明日香川 瀬々ゆ渡しし 石橋もなし
(万葉集 読み人知らず)
年月はそれほど経ていないのに、明日香川の瀬に渡していた石橋もなくなってしまった。時は移ろい、橋も消えた。
久しぶりの旅か帰郷か。この時代の「石橋」は石を組んだ橋でなく、川を渡るための飛び石とされる。
橋の原型。人は万葉の時代から、橋に思いを託していた。
作者は何かを失って、ここに来たのかもしれない。
(3月1日付で発行の「創刊準備号」コラム。4月の創刊後も、橋をテーマにした文章の1節、詩、短歌、俳句等を四季折々の花の写真とともにお届けします)
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