大石久和氏③ 「公共事業費の削減 デフレを加速させた」

間違いだった 財政危機宣言

――日本人は土木の意味が分かっていた民族で、実際に昔から土木事業を営々と積み上げてきたという前回のお話でした。それが今日、公共事業という言葉が独特の響きをもって語られるようになってしまったのはなぜか。そして、公共事業費が削減され続けてきたのはなぜか。その具体的なきっかけが、先に触れた1995年(平成7年)の「財政危機宣言」なのですね。

大石 我が国の財政は世界の先進国の2倍も借金を抱えていると、はっきり言って間違った説明があって、国民にも政治家にも刷り込まれてしまったところに大きな問題があります。それで、この国がうまく回っているなら何の問題もありません。しかし実際は、経済は成長しないし、国民は貧困化しています。日本に経済的ステータスは落ち続けているのです。間違いだったことははっきりしました。だったら、もう20年も経ったのだから、いい加減に目を覚ましませんか、というのが私の思いです。

(中略)

15年前に警鐘「中央公論」で

――ところで、会長は国土交通省の技監時代、「中央公論」2003年12月号に「本当に公共事業は悪役なのですか」という論文(注2)を執筆しました。公共事業を悪者にして、一歩的に削減することへの警鐘です。「公共事業に対する批判が声高に唱えられて久しい」という文章に始まり、そうした批判が実態を反映していないこと、国土整備の方向性を時代の要請にかなったものに変えていくことがこの国に有益であることを指摘しました。それから15年経ちましたが、公共事業を巡る状況はそれほど変わっていないようにみえます。

大石 あと10年経ってもこれを言わなければならない状況だったら、日本の世界に対するGDPシェアは3%とか2%とか、メキシコレベルに下がってしまいます。その時に日本が何を言っても、世界は絶対に耳を傾けません。

アメリカも太平洋の防衛のために日本をイコール・パートナーとは見なくなります。日本、信ずるに足りず、体力不足です。アメリカと対等の同盟を結ぶことができたのは、18%のGDPシェアを持っていたからです。一人前の国として扱ってくれました。今6%になって、ましてセキュリティ、安全政策も確立していないこの国ですから、トランプ大統領が何か言うたびに、おどおど、びくびくしなければならない国になり果ててしまいました。

もっとそんな国になるということですよ、中央公論に書いたことを10年後にも言わなければならないとしたら。

(全文は「橋梁通信」6月15日号でご覧ください)