大石久和氏⑤ 「目標とするネットワーク いかに作り 維持するか」

メンテナンスで 自然と長寿命化

――橋梁の世界で「メンテナンスの時代」と安易に言うな、という前回のお話でした。

大石 メンテナンスの重要性は当然です。きちんとメンテナンスをしておけば、自然と長寿命になるのです。それを、手を抜いたり、必要な費用をかけるべき時にかけなかったりすると、後世、大きなお金がいるようになります。

海外でも日本でも、100年150年もっている橋梁はたくさんあります。ちゃんとメンテナンスをしておけば、そうなるのです。

ですから、私はメンテナンスを否定しているわけではありません。メンテナンスの時代だから新設なんかできないという言い方は、公共事業バッシングンの延長線上の主張でしかないと考えるのです。

――メンテナンスはもちろん大事だが、新設も必要、ということですね。

大石 目標とすべきは、必要なネットワークをいかに作り上げて維持するか、ということ。ネットワークが出来上がってもいない時に、もうメンテナンスの時代ですなんて、言えるわけがありません。

それは、タヌキやクマしか通らない高速道路を作っているといった、公共事業をバッシングすればいいという、かつての安易な風潮に乗った人間の発言だと思います。

「荒廃するアメリカ」 学ぶべきは

――メンテナンスの時代と言われながら。そのメンテナンスが十分なのか、不安もあります。

大石 1980年代から、「荒廃するアメリカ」と言われました。

(中略)

インフラ・メンテナンスの重要性に合理的な考え方のできるアメリカ人でさえ、十分に手が回っていなかった訳です。アメリカはそれから、メンテナンスに本腰を入れたのですが、いったん荒廃させてしまうと、なかなか難しいですね。人間の体と同じかも知れません。

1980年台のアメリカというお手本があるのだから、そこから学ばないのは、賢くない話だと思います。

小泉首相 猪瀬氏に乗った

――お話があった公共事業バッシングですが、いつから? どうして? をしっかり認識する必要があると考えます。村山内閣(1994年―1996年)の「財政危機宣言」が、財政再建至上主義による公共事業削減の出発点だったというお話を以前(大石氏シリーズ第1回)伺いました。財務省(当時は大蔵省)のキャンペーンだったとことです。しかし、村山さんだけが問題なのではなく、道路特定財源廃止の基本方針(2005年)や、道路公団民営化に舵を切った小泉内閣(2001年―2006年)も批判されてしかるべきではないでしょうか。

大石  (中略)小泉さんもさることながら、猪瀬直樹さんですね。彼の発想に小泉さんが乗ってしまった、という感じなのです。猪瀬さんは道路公団論みたいなものを書いていて、小泉さんは「猪瀬にやらせる」となってしまいました。

猪瀬さんは、ほとんど何の根拠もないのに、道路公団の管理費は3分の1にできるなんて言って、そうさせてしまいました。

それから、第2東名は片側3車線で計画され、トンネルが片側3車線で出来上がっている部分が幾つもあるのに、わざわざ2車線で供用しています。こんなバカなことはありません。それをやれと言ったのも猪瀬さんでした。

素人が自分の主張のメンツを立てるために言ったことを、小泉さんはそのままやらされた、あるいは、やらせたのです。後ろに小泉さんの存在があったから、猪瀬さんも強いことが言えた訳でしょうね。失敗でした。問題だったと思います。