大石久和氏⑥ 「すべての市町村を孤立させない 災害時 道路ネットワークで」

「言葉の土木」の大石久和氏インタビューは西日本豪雨の前に行われたが、録音を起こすと、今日を見通したかのような警鐘が続いていた。「道路ネットワークの整備で市町村を孤立させるな」「物流が止まったら一瞬で生活が成り立たない」。橋梁を含む道路にかかわる人の仕事は、人々の暮らしの守護神と言える。

小泉内閣 公共事業減らし わが国にどんな悪影響与えたか

――小泉純一郎元首相は、道路公団の民営化や地域分割などを主導した猪瀬直樹さんに乗ったという前回のお話でした。

大石 私の著書「『危機感のない日本』の危機」の「あとがき」で、アメリカの経済学者ポール・クルーグマンが2002年に書いた本の中で「小泉首相はアメリカのフーバー大統領になぞらえられるだろう」と書いたことを紹介しました。フーバー大統領はアメリカの財政政策で最大の失敗をしたと言われている人ですが、私はその通りになったと思います。しかし、日本人は過去に何を言ったか、ぜんぜん追及しない民族なのです。

――忘れっぽい。

大石 公共事業をどんどん削減したのは、小泉さんの時代でした。それが我が国にどんな悪影響を与えたか、検証したり、モノを言ったりする人がいません。

――国の方向を誤らせた小泉さんが最近は「脱原発」とか言って、マスコミにもてはやされています。

大石 おかしいです。中国は建設中の原発が20基あります。それに万が一のことがあったら、(影響が)偏西風で全部日本に来る。そうした状況を考えた時、日本の国内から原発がなくなったら、それでハッピーということになりますか。なる訳がありません。

(中略)

道路の多様な機能 分かりやすく説明を

大石 道路は今まで、こんな目標を言ったことはありません。市町村道から高速道路に至るまですべてのネットワークを使って、すべての市町村が災害時に孤立しないようにする、と。

この国にとって、ものすごく大事なことだと思います。本当はそれぞれの「字」が孤立しないようにと言いたいのですが、それはちょっと言い過ぎなので、市町村が孤立しないことが極めて大事です。

――なぜでしょうか。

大石 まず、高齢化が進んでいます。それから、今の家庭は食糧の備蓄をしません。昔の家庭はお米を米びつに入れていましたし、みそだって何㌔も持っていました。今は、その都度買いに行けば済みます。だから、備蓄をしなくても、おいしいものが食べられます。その代わり、物流が止まったら、一瞬で生活が成り立ちません。

これからは、道路が渋滞をなくします、高速で走れます、以外に、こういう整備目標を持たなくてはいけません。それも、国民の皆様に分かりやすく。孤立させないために、ここに橋が必要なのですよ、こういう説明の仕方です。

渋滞があるから、も大事ですが、それだけではなく、道路が持つ多様な機能について、もっと広範な説明力を私たちが身につけないといけないと思います。

――公共事業への理解を増すために、防災は説得力がありそうですね。

大石 災害が続いていますからね。

(全文は「橋梁通信」8月1日号でご覧ください)