豪雨災害 橋梁人の現場ルポ 「想像力が必要だ」

橋梁など構造物のメンテナンス会社・山陽ロード工業株式会社(本社・岡山市、秋田英次社長)の森川洋介・補修技術室長(写真左)から、

迫真の現場ルポが橋梁通信社に寄せられた。

難しい全容把握 被害が広範囲ゆえに

災害の発生から一週間経ったというのに、今なお晴天下で洪水警報や避難指示が発令されるという異常事態が続くなか、私は呉~東広島方面の状況確認に向かった。

被害の全容把握は難しい。生活圏が広く浸水した地域(写真上)、大規模な斜面崩壊、土砂の流入や地盤の崩壊に伴う道路や線路の通行止め、近くから遠くまで山肌に残る数多くの土砂崩れ--。これらの爪痕が極めて広範囲に及んでいるからだ。

呉市安浦町。私が中学時代から7年間暮らした懐かしい町は、生活圏が広範囲に渡って浸水した。

親友の家がある地域も浸水した模様なので、そこへ向かう。少し離れた川の横で車を下りると、

道路上の水はすでに引いていた。細かな土埃が立ち上る。風向きによっては、湿気とともにヘドロのにおいがムッと立ちこめる。

材木等が堆積した鉄道橋(写真左、右)横の踏切を越え、人気のない通り(写真左下)を歩くと、

 

彼の父親が営む理髪店が見えた(写真右下)。ドアの窓は割れ、中の様子が伺える。

散髪用の椅子も、完全に泥水をかぶった様子だ(写真左下)。

帰省する度、この2階で騒いでは、彼の母親に怒られたことを思い出し、悲しくなった。

 

 

負けない笑顔 暮らしの再建に向けて

近くにいた人に聞くと、店舗とは別の住居の方に家族がいるのでは、とのこと。そちらを訪ねると、彼の父親がいた。久しぶりにあったため、最初は私がだれか分からない様子だったが、すぐ思い出して笑顔を向けてくれた。「店はもうダメだが、住居の一角を改築して営業を続ける」。そう言って、店舗よりは幾分被害が少ない住居を掃除していた。

帰り際に「頑張って」と伝えると、笑いながら「来てくれてありがとう」と返してくれた。災害というものが、人の生活にどれほど深刻な影響を及ぼすのか、またその中でも希望を持つことがどれほど大切なのか。自分の血肉として実感した瞬間だった。それと共に、人々の生活を守るインフラ整備に従事する者として、そのことをイメージできる「想像力」が必要だと思い知らされた。

「ありがたいことに、水は出ています」

現地調査の際、家の前を片付けていた女性に「水は出ていますか」と尋ねたところ、過酷な状況にも関わらず、「ありがたいことに、水は出ています」と返答していただいた。「ありがたいことに」の一言が、深く印象に残った。

ふだんは気にもとめないが、水道、そして道路などのインフラ設備は、本来「ありがたい」ものに違いない。この原稿を書いている今も、土砂の流入等で寸断された道路交通網が、復旧作業に関わる建設会社の懸命な尽力により、徐々につながりを取り戻してきている。私が今回、現地確認に赴くことができたのも、ひとえに彼らのおかげである。インフラ復旧が希望の灯をともすという彼らの「想像力」の賜物だ。梅雨も明け、豪雨から一転して過酷な猛暑のなか、地域のために昼夜を問わず復旧作業に従事する方々に心より敬意を表したい。

最後になりますが、この度の西日本豪雨災害で犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。また、被災された皆様が、一刻も早く平穏な日常を取り戻されますよう、心よりお祈り申し上げます。