田中賞 発注者コメント③ 阿蘇長陽大橋の補修

辻芳樹氏

国土交通省 九州地方整備局 熊本復興事務所長 辻芳樹氏

この度、土木学会の田中賞を受賞できたこと、復旧に携わった皆様に感謝申し上げます。

被災直後は、被災箇所へのアクセスが困難な状況であったため、UAVや橋梁点検装置等を活用した調査を実施し、追加調査は工事と並行して行い、詳細な被災状況や地質状況を把握しながら工事を行いました。

A2側からの眺望

このため、対策範囲の拡大や新たに対策が必要となった場合は、調査結果を設計・施工計画に随時フィードバックする必要があり、発注者、施工者、設計者の3者会議を頻繁に開催しました。今回の受賞は、このように技術的な議論を重ね、休みを返上し、昼夜いとわずに開通を目指した方々の努力が評価をいただいたものと思います。

橋梁の被災状況は、斜面崩落に伴い、橋台の沈下や、上・下部工に多数のひび割れが発生していました。特にP3橋脚では中空断面部に貫通ひび割れが発生し、橋梁全体の損傷は甚大でした。一方で当該路線は、震災からの復興に向けた重要な路線に位置していたことから,早期復旧を目指しました。

沈下した橋台は、再び大規模な地震が発生し斜面が変形しても構造全体が変位しにくい連続ラーメン構造として再構築し、斜面から離れる方向に道路線形を変更しました。

橋台部の工事状況(A2から)

貫通ひび割れが生じたP3橋脚では、死荷重増と振動特性への影響を確認した上で中空部へのコンクリート充填による断面充実化と炭素繊維シートを併用し、耐荷力回復と変形性能の改善を図りました。また、ICT技術を活用し、補修の前後での橋の揺れ方の違いを計測し補修効果の確認を行い、充填したコンクリートが失われた抵抗力を補う役割を果たしていることを確認しております。

この他にも,再び大地震が発生した場合のことを考え、橋梁の状態を確認できる点検孔や,ひび割れの進行を確認できるように維持管理を考慮した施工上の工夫を取り入れた補修を行っております。

兄弟部の工事状況(A1の再構築)

本復旧工事は、熊本地震をはじめ、これまで数多くの震災経験やそこから得られた知見を踏まえ様々な技術的工夫を取り入れており、復旧工事の先駆けとなるものと考えております。

阿蘇長陽大橋は、平成29年8月に通行を再開し、地域の皆さんから多くの喜びの声をいただきました。私ども熊本復興事務所では、この他にも橋梁の架替や補修工事を行っており、今なお迂回を余儀なくしている路線も存在し復旧の途中段階です。これからも早期復旧に努め、地域の復興に役立つために努力して参ります。

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概要

設計者: [上部構造] (株)建設技術研究所 [下部構造] (株)建設技術研究所

施工者: [上部構造] (橋体)(株)富士ピー・エス、(舗装)杉本建設・藤本建設工業JV [下部構造] (橋脚)(株)富士ピー・エス、(A1橋台)杉本建設・藤本建設工業JV、(A2橋台)肥後建設社・南陽建設JV、(A2仮受)(株)南陽建設

所在地: 熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字立野地内

構造形式:上部工: PC4径間連続ラーメン箱桁橋の補修

下部工:5径間連続RCラーメン構造による橋台再構築(直接基礎)、RC逆T式橋台による再構築(直接基礎)、壁式橋脚の補修(直接基礎、深礎杭基礎)

橋長:276.0(支間割:39.3m+2@91.0+53.3m)

幅員構成:7.5m(内訳:0.5m[路肩]+2@2.75[車道0.5m[路肩]+ 1.0m[歩道] )工期:平成28年5月~平成29年8月