大石久和氏⑧ 最終回 「橋の意義 広く世に語ろう 業界自ら」

8回にわたって縦横無尽に語ってもらった大石久和氏シリーズの最終回。インタビューはいったん幕を閉じるが、橋梁通信は今後も紙面のあらゆる場を使って、「大石流」をアピールしていきたい。

大学院は橋梁研究室

――多方面に渡るお話を伺ってきました。そもそもですが、橋梁とはどんな縁がありますか。

大石 私は京都大学大学院の橋梁研究室を出ました。橋梁の知識を建設省(当時)に入ってから使ったことは、ほとんどありませんが(笑い)。

入省して、最初の赴任地は栃木県でした。県の道路建設課の橋梁係に配属されて、そこで橋梁はやりましたが、大学で学んだ知識は何の役にも立ちませんでした。田中角栄さんの時代ですから、公共事業費が対前年2割3割の増加です。橋も一生懸命架けました。忙しかった。

(中略)

成長、競争力、安全、効率的

――最後に、橋梁業界へのアドバイスをお願いします。

大石 橋梁の方が橋梁を大事にする、橋梁の技術力を磨く。架設・メンテナンスを含めてですが、今まで以上にそうしたご努力はお願いしなければなりません。しかし、その橋梁を取り巻く環境について、ぜひ発言をしてほしいと思います。

橋梁は、建設や架設はフローの公共事業かも知れませんが、できあがって人や車が通れるようになって初めて意味を持ちます。その意味は何なのか。国の経済を成長させ、競争力を増し、人々の暮らしを安全にし、効率的にすることです。その意義をぜひ多くの方々に語ってほしいのです。

だから橋を架けろという直接的な言い方でなく、橋は道路の中でも一番ネックになる最後の場所ですから、そこをやる意義は何なのか、ぜひ広範に語っていただきたい。

サンフランシスコと比べれば

――新規の長大橋がないと、世界に冠たる技術の継承も課題です。

大石 今やっているインフラ整備は、1987年の四全総でノミネートしたものを順次整備していっているのです。1987年以降、大きな計画は作っていません。それで本当にいいのか。

例えば東京湾口は本当に閉じなくていいのか。閉じることで、東京湾沿岸の道路は環状道路になり、極めて画期的な意義を持ちます。中心がなくなるのですから。今は東京から千葉に行く、東京から三浦半島に行く。いつまでたっても、中心は東京です。湾口を結べば、どこでも中心になり得ます。

サンフランシスコのベイエリアと比べてください。東京湾エリアに比べてGRP(域内総生産)は小さいのに、どれだけの数の橋が架かっているか。彼らは地域が持つポテンシャルを最大限発揮できるインフラを用意しているのです。

長大橋の計画を全部復活しろとは言いませんが、例えば東京湾口や伊勢湾口などはもう一度見直しをすべきだと思います。この国にとって本当に必要ないものなのか。

これからは、少なくなる人間がGDPを稼がなければいけません。そのためのツールとして足りないものは何なのか、よく見なければなりません。

――東京湾口は一極集中の解決にもつながります。 

橋梁メーカートップが経団連で

 大石 そうです。やることは他にもたくさんあります。例えば中央道や中国道は時速80キロ規制が多いですが、それこそ橋を架けてまっすぐ走れるようにする。新東名の様に120㎞で走れる環境を作っていけばいいのです。

人口が減るからできない、ではなく、人口が減るからこそ1人当たりの生産性を高めなければいけない、そのためには120㎞で動ける環境整備が必要だという目標を掲げるべきです。

橋梁を含む道路ネットワークの意義を、橋梁メーカーのトップが例えば経団連で語るとか、異業種の人たちにも理解させるとか、そういう能力をぜひ身に付けてほしいですね。(終)