橋に魅せられて 四国総合研究所 西森修次さん 

膨張係数に着目 新塗料を開発

現在の防食業界で主流の塗料に異論を唱える等、異彩を放つ存在だ。

例えば、日本防錆技術協会が主催する「防錆防食技術発表大会」、日本鋼構造協会が開く「鉄構塗装討論会」等々。素材メーカーの技術者とは、まるで恒例行事のように異なる見解を戦わせる。発表者が重鎮だろうが若い女性だろうが、その辛辣な質問は変わらない。

「私は、議論で喧嘩できるようにならないと、1人前だと評価されない企業で育てられました。納得できなければ、言うべきことを言う。仮に親しい間柄であっても、意見を戦わせることが公平、公正だと思います」

西森さんを良く知る人は、「彼の主張は核心をついているので、塗料メーカーの技術者も面と向かって反論できない」と主張の正当性を認めている。

1959年に高知で生まれ、香川・高松で育った。静岡大学工学部に進学し、化学を専攻。半導体で知られる総合化学材料メーカーに入社した。

以来、エポキシ樹脂塗料の配合設計に興味を持ち、防食塗料の開発をライフワークにしてきた。

33歳の時、家庭の事情で四国電力に転職。翌年にグループ会社の四国総合研究所に出向して現在に至る。ここでも送電鉄塔用の補修塗料の開発などを手がけ、塗替え回数を減らしたりしてきた。

今回、温度変化によって素材の寸法が変化する「線膨張係数(せんぼうちょうけいすう)」に着目。大手塗料メーカー3社と共同で、橋梁などの補修用の剥離抑制型弱溶剤変性エポキシ塗料「αシリーズ」を開発した。

開発着手から今夏の発表まで、十年弱の歳月をかけた。「αシリーズの開発で今後、防食塗料の配合設計が大きく変わらざるを得ないほど影響が大きい」と自負する。

定年まで、あと1年2ヶ月。「自分の主張が理解されず、人間関係で悩んだこともある。それでも共に仕事をしてくれた塗料メーカー等、防食業界に感謝しています。恩返しのためにも、αシリーズの開発で最後のご奉公をしたい」。辛辣さは消え、静かな語り口だった。58歳。

(化学バイオ技術部 塗料化学グループ長)

※橋梁通信2018・9・1号掲載