田中賞 発注者コメント⑤ 長崎市・出島表門橋

木下幸男氏

長崎市 土木部 土木建設課 主任 木下幸男氏

土木学会『田中賞』という素晴らしい賞を頂けたことに感謝申し上げます。

長崎市が管理している橋(2m以上)は約900ありますが、田中賞は一般的に大きな橋が受賞することが多いなか、出島表門橋は長さ38.5mの歩道橋での受賞となりました。その計画から架設までの事業に携れたことを大変喜ばしく思います。

設計に関しては、右岸側(中島川公園)は埋蔵文化財包蔵地であるので、事前に発掘調査を要しました。左岸側(出島側)は国指定史跡であり、載荷重は原地盤の耐力以内で、掘削はGL-0.3mまでの条件でした。

史跡風景との調和図る

関係機関との協議、また市民の声を聴きながらの事業は容易でありませんでしたが、橋脚は設けず、右岸側で鋼橋を支える片持ち梁構造形式を選定し、完成後の橋が目立ち過ぎず風景に溶け込むように桁のウエブに無数の開口部を設けることで、景観との調和を図り、構造面、デザイン面で、一般的な橋梁と比較すると特殊な構造形式の選定に至りました。

街に溶け込む出島表門橋

長崎の造船技術を活用して製作された橋桁は、海上は台船輸送40km、陸上は多軸台車輸送0.9kmの運搬によるものでした。陸揚げ場及び搬送経路の選定、幹線道路の通行止め等、各種協議に期間を要したものの問題点の解決により、架設の実施を迎えることができました。事前に広報PRを行ったことにより、現場作業当日はメディア、多くの市民が見守るなか、作業員の方々は通常とは異なる緊張感が高まる作業であったため、架設が無事に終わった瞬間は達成感、安堵感に満ちあふれた表情でした。また、橋が架かる過程を見守った市民の方々には、出島表門橋により一層、愛着が増した誇らしげな表情を見ることができました。

平成29年11月24日の完成記念式典には皇室、オランダ王室からの御来賓を迎え、多くの市民に祝福を賜り、供用開始を迎えることができました。

通常ならば、供用開始時点で一連のプロジェクトは一旦終了することとなりますが、現在に至っても、設計者、施行者、発注者、市民の有志により、表門橋周辺の点検を含めた清掃活動(橋守、月2回)を行い、メンテナンスによる人と人とのつながりを大切にしております。

これからも多くの方々をつなげる橋となり、出島が交流の拠点になりますように。

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概要

工期=設計2013年12月~2015年11月

橋梁下部工 2016年1月~11月

橋梁上部工 2016年3月~2017年9月

2 架設工法 大型搬送車・大型クレーンによる一括架設工法

3 概要   〔橋長〕  38・5m〔幅員〕4・4m、構造形式〔上部構造〕2径間鋼連続鈑桁橋 骨造(床板:栗材 手摺:ドゥッシー材)(下部構造〕カウンターウェイト橋台+杭基礎、(照明灯具〕LEDライン照明

出島表門橋 長崎・出島と言えば、鎖国時代に海外、それもオランダのみに開かれた唯一の窓口として、「西洋」を受け入れていた。もともとは扇型の人工島で橋で陸と結ばれていたが、明治に入って出島の周辺は埋め立てられ、すっかり陸の一部になった。長崎市は出島を鎖国時代の姿に復元し、再び橋も架けようというプロジェクトを進めてきた。