「設計、施工双方向の連携を円滑にする技術」 M-CIM研究会 岡山で講演会を開催

会場風景

 

M-CIM研究会(代表=中馬勝己・補修技術設計社長)は8月24日、岡山県で初めての講習会を開催した。

会員企業の山陽ロード工業(岡山県津山市、秋田英次社長)が協賛し、岡山県内の発注者、建設会社、設計コンサルなど120人が参加し、大盛況で幕を閉じた(橋梁通信社後援)。

同日の講演概要を掲載する。

 

 

「切磋琢磨できる会」 開会挨拶 中馬勝己代表

M-CIM研究会は、今年9月で発足から3年目を迎える。当社が約7年前から、橋梁の補修や補強の調査・補修設計に活用していたレーザースキャナ技術とノウハウを、志を同じくする数社と共有するところから始まった。実際に3次元データを取り入れようとしても、1社だけでは、費用や情報収集等に限界があるためだ。

現在はレーザースキャナだけではなく、各地域の会員がそれぞれ保有している技術や知見、例えばドローンや点検システム等の最新情報を共有し、情報交換する場となっていると共に、会員同士で切磋琢磨し合える場となってきた。

本日は、その一端をご紹介したい。ご来場の皆様方に、少しでも役立つものが提示できれば、と考えている。

 

 

 

「点検ロボットが全国311橋で実績」ジビル調査設計 南出重克氏

ジビル調査設計・南出重克氏の講演

当社が開発した「橋梁点検支援ロボット『視る診る』(みる・みる)」を紹介する。

橋梁点検車が利用できない橋梁や狭隘部の点検を、支援することを目的に開発した。交通規制の低減を図りたい場合や、点検車が使えない、使いづらい橋梁―①歩道幅が大きい②歩道橋③近接橋―等での引き合いが増えている。2017年度までに日本全国311橋で活用された。

機能は、橋面上に設置した自走式ベースマシン(幅1m)から伸ばしたアームユニットを橋梁下面に挿入して点検するものだ。アームに搭載したカメラユニットで近接撮影し、点検用モニタで確認、データの取得を行う。多彩な測定ツールで、ひび割れや浮き・はく離の検出を可能とした。

噴出清掃メンテナンス機能を用いれば、支承周りの土砂や汚れ等の点検障害物を、高圧噴射機能等を用いて除去することができる他、高圧水を用いた洗浄もできる。

操作は、すべて橋面上から遠隔操作で行うことができるため安全で、現場で点検技術者(道路橋点検士等)が直接、操作しながら作業を進められる点も特徴だ。

(会場からの質問)

――「視る診る」は橋梁下面の点検がメインだ。ドローンとの優位性を教えて欲しい。

南出 オペレーターが橋面から操作できるため、主桁間や桁に添加管などがあるような狭隘な部位の点検に優位性がある。

逆に床版橋など特徴がない橋梁で、かつスピードを重視したい場合や、高橋脚の橋梁等ではドローンの方が優位性があると思う。

大事なことは、1つの橋梁を点検する時には、1つのロボットに限定するのではなく、部位ごとに最適なロボットを活用していくことだ。ロボット点検を定着させていく一策かと思う。

 

「熟練技術者にも漏れはある」 補修技術設計 中馬勝己氏

橋梁点検、その後の補修設計も同様だが、熟練技術者が現地調査に行けば、全く点検に漏れがないのかと言えば必ずしもそうではない。

いくら熟練技術者でも外気温の暑さ寒さに左右され、限られた時間等々の制約があれば、細かいところまで正確に見ることは難しい。

仕事の流れを変えていかないと生産性向上は図れない。当社が2次元、3次元技術を活用するのは、円滑に事業を継続していくためだ。高い専門性を持っていない社員でも2・3次元技術を活用することで、一定レベルが担保できる。

当社が開発した「リアルタイムカメラ(メットカメラ)」は、事務所に居ながら現場への判断や指示ができ、現場で撮影した画像を内業で処理することなどを実現する形で活用している。

デジタルカメラを活用するだけでも様々なことができる。

2次元データ活用事例として、当社はコンクリート構造物のひび割れ抽出作業には、専門スタッフを育成して、人間が画像を見ながら野帳のひび割れをプロットし、検出している。その方が作業的に早く、かつ低コストでできる。現在はこの作業をフィリピンに委託している。

3次元画像は、対象物を重複する形で連写して撮影していくことで、大小問わずに画像を立体化できる。ロッカー支承の取替工事での活用事例を紹介する。支承の取り替えでジャッキアップするためには、既設ブラケットがジャッキアップの荷重に耐えられないため、ブラケットを一旦、取り外してアンカーを計測して、またブラケットを戻す。交換する支承が届き次第、ブラケット着脱をもう一度行うという当初の設計だった。これを写真撮影しCADに貼り付けて、3次元化し原寸画像として1工程を減らすことができた。

3次元レーザースキャナは、点群レーザーを1秒間に約100万発、足下以外の四方八方に飛ばし、そのはね返りをXYZ軸で計測するしくみだ。

既設橋の場合、竣工図がほとんどない。橋を丸ごとスキャンすることで、全体像を把握できる。依頼がなくても、スキャンをかけて復元図を起こしている。

 

「研究会に多くのヒント」 山陽ロード工業 秋田英次社長

「東京と地方では、情報量が圧倒的に違う。その意味でも、先進的な技術を紹介する講演会が、岡山で開けたことをうれしく思っている。良い構造物を造る、適切に長寿命化を図る際に、設計と施工の連携が重要だ。M-CIM研究会の取り組みは、設計・施工の双方向の連携を円滑にすると同時に、施工側から設計側を支援できる部分もある。労働人口が少なくなっていく中で、ここには多くのヒントがあると思う」

「西日本では、7月豪雨、前日(8月23日)からの台風襲来があった中で、これだけ沢山の聴講者に来て頂いた。M-CIMが橋梁の長寿命化に期待されていると実感し、身が引き締まる思いだ」

 

 

 

 

「3次元の実績を積み上げる会」山陽ロード工業 森川洋介氏

2次元CADは成果品を出すものという目的があるが、3次元関係のソフト、機器はオールインワンで何でもできるものではない。やりたいことが明確になっていないと、せっかく高価なソフト・機器を保有したとしても使いこなせない。

私見だが、当研究会は実績を現場から積み上げて、3次元の活用方法を模索していく会だ。同じようなレベル・場面で、苦労している人たちと交流できることは、ありがたい。自分の立ち位置を客観的に判断できる。最先端とは言えないかも知れないが、時代の潮流について行けているのも当研究会のお陰だと思っている。

 

 

 

 

「総合的な能力が必要」 元日本大学生産工学部教授 栁内睦人氏

「21世紀の土木技術者には、構造物の現状を的確に評価できる知識や技能、また、延命化のために最適なメンテナンス技術を提案できる総合的な能力が必要になってきている。ぜひ、コンクリート診断士やインフラ調査士の資格取得にチャレンジして欲しい」

 

 

 

 

 

 

「希望者の入会を歓迎」 M-CIM研究会事務局 小出博氏

本日は、橋梁点検ロボット、レーザースキャナの精度検証と計測活用事例、そして「社会基盤構造物の維持管理」に関して発表させて頂いた。1つでも皆様の経済活動の役に立てれば、幸いだ。

当研究会は、基本的に法人と個人の会員から構成されている。法人会員はレーザースキャナやドローン、点検ロボット等を駆使して実際に活動する方、個人会員は研究会で得た知見を多目的に活用する方で、いずれも入会希望者を募っている。ご興味がある方は、事務局まで連絡いただきたい。

 

 

 

 

「ノウハウ開示に驚き」 オフィスケイワン 保田敬一社長

オフィスケイワン 保田敬一社長の感想

「講演会では、これまでに蓄積したノウハウ等をオープンに開示していて驚いた。インフラ保全を通じて社会に貢献していく、という会員の意欲を感じた」

 

 

 

 

 

 

【M-CIM研究会】

「M-CIM研究会」の「M」はメンテナンスを指す。構造物の維持管理に関わる法人・個人が3次元モデルの活用をついて共同で研究し、業務の効率化や新技術の活用などを図ることを目的に集まった。会員数は発足当初、法人5者、個人5者だった。現在は法人13者、個人16者にまで拡大している。正会員には補修技術設計が機材の貸与、技術指導等を行う。研究会としては、年2回開催の「技術ミーティング」で新技術や事例報告と、情報交換を行っている。