淀川大橋 歴史と存在感が圧倒 2期工事がスタート

国土交通省大阪国道事務所が進める大阪市・淀川大橋の長寿命化工事は、92歳と老朽化して腐食が進んだ橋梁の大規模修繕だ。過去最大規模とされるだけに、全国的にも注目が集まり、昨年10月からの半年間で説明会や見学会が約40回開かれ、地元・各種団体からすでに約800人が訪れた。まもなく2期目に入る同工事について報告する。

上流側からの全景(IHI・横河住金JV提供、昨年12月撮影)

淀川大橋は、阪神間を結ぶ国道2号に架かる。大阪府が1926年(大正15年)に造った。橋長724・5㍍、全幅員20・8㍍。上部工形式は(中央径間)鋼6径間単純上路式ワーレントラス橋+(側径間)鋼12径間単純鈑桁橋、下部工形式は控え壁式橋台(木杭基礎)、円柱橋脚(オープンケーソン基礎)、小判型橋脚(木杭基礎)。当初は大阪府が事業者だったが、後に管理は大阪市へ、さらに国へと移った。土木学会が選定した「浪速の名橋50選」の一つだ。

 

2013年度(平成25年度)に行って(た)点検では、健全度Ⅲのレベルで、早期の改善措置を求められた。学識経験者にも助言をいただき、設計・施工法について協議を重ねた結果、費用面、また構造上の問題から、架け替えではなく、重いコンクリート床版から軽い鋼床版に変えることになった。

修繕工事の基本設計は、エイト日本技術開発。国内初の技術提案交渉方式で発注され、IHIインフラシステム・横河住金ブリッジJVが昨年度から施工を進めてきた。

国道2号は阪神間の主要道路だけに、一日の通行量は約4万台に上る。完全な通行止めは難しいため、1期・下流側、2期・上流側、3期・中央部と工期を(橋軸方向に)3分割し、4車線をそれぞれの場所で2車線に変更、対面交通にするという工夫をした。

また、工事は毎年、非出水期の11~5月の7ヶ月間に行う。工程上の厳しさから、橋を8工区に分けて同時に施工を行っている。その間、最盛期には150人体制にもなる上、重機等も工事時期に集める難しさがあり、JV両社は会社を挙げて取り組んできた。

現在は1期・下流側の床版取替、舗装が終わったところで、2期目の鋼床版が工場製作中だ。工事は順調に進んでおり、全体の約40%が完了。8月から道路の切替え作業に入り、11月に2期・上流側に着手する予定だ。

工事の課題① 管理者が変遷 詳細図が存在せず 点群データから設計図作成

高齢な上、管理者が変遷してきた同橋は、建設時の詳細設計図が存在しない。そのため、陸上や船上から3Dレーザースキャナーで橋全体を実測した点群データを元に設計図を起こし、鋼床版を製作した。実際の架設時には、ほぼ計測通り、確実に床版が収まったという。

また、淀川大橋の鈑桁部は上フランジを巻き込んだ形で床版ができていたため、主桁の上フランジの状態やリベットの配置状況などの不可視部については、工事前に一部分をはつりとって計測した。

上フランジが腐食で板厚が半分ない状態も想定し、事前に補強材を1径間分準備していたが、実際は5、6箇所の小規模な補強で済んでいる。

工事の課題② 損傷状況不明 工事前、荷重変動の解析 ひずみゲージとモニタリングで監視

橋の損傷状況も詳細には不明なため、床版取替にあっては荷重の変動が課題となった。応力が集中して座屈が起きる可能性も考えられたからだ。

その対策として、まず着工前、荷重変動を詳細に解析。工事実施時には、歪みゲージと加速度計をトラス、鈑桁に1径間ずつ張り、既設床版を撤去し鋼床版を載せるまで、供用中の橋に不測の事態が起きないよう、リアルタイムでモニタリングした。

その結果、計測値は事前の解析値にほぼ沿った形となり、予測通りの応力が計測されて安全に施工することができた。

また、モニタリングシステムの中で閾値(しきいち)を設け、それを超えた場合は足場上と橋面上で赤ランプが、その1段階前の75%のラインを超えた場合は黄色のランプが、それぞれ回るようにシステムを組み、いつでも工事が止められるようにしながら安全に作業を進めた。

ランプが回ると同時に、職員全員にメールが自動配信され、休日でも職員がすぐ点検に行けるようにしてある。今のところ、1度もそのような事態は起きていない。

さらに、不可視部まで反映した3Dモデルを工事中に作り、今後、維持管理に役立てる予定だ。

事業に携わっている皆さん

国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所 総括保全対策官 奈良明彦さん

(保全部門中心の業務へ異動し4年目。以来、保全工事の面白さを伝導することに)

「コア抜きした断面を見ると、各年代に少しずつ補修、補強をしてきたことが明らかになった。適切な時期に、適切な補修を行ったということ。それに併せて、当初は橋の中央に路面列車が走る構造になっていること、建造が関東大震災直後で耐震性能が考慮されて通常の橋より強く作られたことから、90年以上も保てたのだと思う。

今回、淀川大橋から勉強できた部分、JVさんとして技術力を発揮していただいた部分など、他の同じような橋の維持管理にこの経験が生かせればいい。若い技術者にも伝えていきたい」

 

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エイト日本技術開発  国土インフラ事業部 理事 技師長 廣瀬 彰則さん(70年余り、日本の橋梁を設計し見守り続けてきた重鎮)

「調査点検段階から橋体に触れ、第二次世界大戦で被弾した傷跡を今に伝えるその姿、そして当時84歳(現在92歳)を迎えながらも今日の社会インフラを支えているその姿に心を打たれた。数々の調査研究に関わり、その結果、架け替えではなく改築・補強のための工事に至ったことに、技術者としての生きがいを感じる。

点検業務においては架橋時の図面が現存しないため、橋梁全体の細かい部材の一つひとつに至るまですべてをディジタルデータ化した3次元モデルを構築した。

大変な作業であったが、それは、同時に進行した産学官研究会やのちの工事用詳細設計のベースとなっている。

私たち建設コンサルタントの段階で、どうしても詳細設計をまとめきることができなかった原因は、「両岸側鈑桁部の、床板コンクリートに埋設された主桁上フランジの健全度評価ができない。」という課題にあった。

設計では最悪の事態を想定しているが、工事中の実態は維持管理がよかったことを物語ってもいるようであった。あとは、発注者・施工者のご尽力で完成の日も近いものと期待している」

国道2号淀川大橋床版取替他工事 IHI・横河住金 特定建設工事共同企業体 総括所長 牟田口拓泉さん

(IHIインフラシステム在籍。15年前から大規模で高難度の修繕工事をIHI本体で取り組み始めた当初メンバー。トルコの第1、第2ボスポラス橋の大規模修繕工事、九州の若戸大橋のケーブル補修、鋼床版連続化工事などを手がけてきた大規模修繕のスペシャリスト)

「90歳の歴史ある橋に携われる機会は少ないので、技術者としてやりがいがある。現場には現場技術者15人、設計技術者が5人いるが、中でも若手にどんどん経験させたい。これから高速道路会社を中心に大規模修繕、床版取り替えの数兆円規模の市場があるので、若手がこの現場での経験を通して、リーダーとなれるように育てたい」

 

 

 

【工事内容】

床版取替が全橋梁12500㎡。伸縮装置取替が橋全体の(延長)600㍍、排水施設橋全体の(延長)1700㍍、地覆工400㎥(→地覆工のコンクリート量400)㎥、防護柵、照明(灯具)もすべて取替え。塗装は工事箇所のみで8000㎡、舗装は橋面全部で12500㎡。足場は21500㎡。

①  作業手順

先に床版のコアを抜き、主桁の位置を確認。同時にワイヤー用の穴を開ける。次に、カッターマシンや70㎝の分厚いところは、ワイヤーソーマシーンを使って床版を形状に切断。その後、床版と密着している主桁部は引きはがすため、油圧ジャッキを使い、矩形状に切った床版を剥離、クレーンで床版を撤去する。

撤去後は一時的に横方向の荷重に対して強度が低下するので、ワイヤーとなる斜めの部材と鋼床版を載せるための高さ調整ビラを主桁上に設置。鋼床版を架設する直前にワイヤーを撤去し、鋼床版を架設する。この作業を繰り返す。