挑戦者たち 流機エンジニアリング会長 西村章さん

業界No.1の高性能フィルターで ブラスト環境を改善

流体機械メーカーとして、他の追随を許さない技術力の高さで業界のトップを走ってきた流機エンジニアリング。手がけた分野は多岐にわたる。トンネルに始まり、航空宇宙、原子力にも挑戦して拡大、近年は橋梁の維持管理にも広がった。26歳で設立し、42年間、同社を導いてきた代表取締役会長の西村章さんに聞いた。

新規の技術開発は年間40件で、新商品は毎年10数件。ビジネスとしては、1993年から販売を中止し、レンタルを始めた。

同社が特に強いのは、きれいな空気や水を作るフィルターの技術。会社発足時の1979年に「粉じん障害防止規則」ができたこともあり、発破やセメントの粉塵などで劣悪なトンネルの作業環境の改善にチャレンジしてきた。

「トンネル内は高さと幅に制限がある中、空気をどうきれいにするか。問題解決のため、これまで数百回の不具合と失敗を繰り返して改良を重ね、フィルター技術を蓄えました。トンネル粉じんの基準は3mg/立米以下ですが、当社の集じん機は0・1mg/立米以下です」

トンネル集じん機の開発で培った技術は、アスベストやダイオキシン、PCB、鉛などを含む土壌汚染の重金属類の除去、さらに焼却炉や製鉄所の設備解体、ブラスト関係、3・11後の福島での除染まで広範囲に活用されている。

しかも、同社のフィルターは一般的なものと違って消耗せず、一定時間ごとに自動クリーニングで再生する。目詰なしで安定して風量を維持できため、ランニングコストが安い。ユーザーにうれしい技術だ。

「橋梁関係では、ブラスト時に有効です。剥離剤を使った後にブラストをかけて素地調整を行う際、発がん物質を含む粉塵が大量に飛散します。わが社の技術を使えば、安価かつ楽に、それらを100%除去できます」。

また、橋梁はフーチングの強化工事で水の浄化が必要。橋脚の支柱では、強化繊維やカーボンファイバーを巻き付ける際のはつりの粉塵処理が必要になる。剥離剤やVOCのにおいの処理も同様だ。

「健康リスク 知らずに作業する人多い」

床版の取替で鉄筋を残して強化コンクリートに打設し直す工法の場合、ウオータージェット(以下、WJ)ではつるが、その際に大事なのが水の再生。例えば給水車5台ほどが工事現場に行き、はつり後に排水用バキュームカー5、6台で処理施設へ運び、汚濁物質を処理して水を川に放流すると、一日100万円以上かかるという。

同社はそれに着目し、濁水を現場でろ過、カルシウムイオンも除去してWJに再利用すること特許を取得した。間もなく商品化される。ランニングコストは10分の1だ。

ブラストの研削材を回収後、空気の力で輸送し、河川敷に設けた基地で、研削材と粉塵に分けて別々に処理することも考えている。

アスベスト含有塗料が見つかった場合、ウオータージェットの超高圧ではつったお釜から吸引し、スラッジを分離後、濁水処理し、再利用が可能な製品もあり、すでに販売を開始している。

トンネルのじん肺被害は大規模で、過去に裁判が何回も起きており、ガイドラインや換気技術指針がしっかり出されている。そのため、じん肺患者は1995年頃、年約600人規模から最近は10人を下回っている。今年4月からは、トンネル内で長期に働く人はすべて登録し、X線検査で肺の状態を追跡、データを建設労働災害防止協会で管理することになった。

「橋梁でもブラスト作業を継続的に行うと、じん肺の問題が出てくるでしょう。健康リスクを知らずに作業している人が多い。アスベストは発症まで30年。作業環境を良好に保つ努力をすれば、将来の発症率は劇的に下がると思います。国、自治体を含め、真剣に考えなければならない時期に来ている」と訴えた。

西村 章(にしむら  あきら)氏

1951年、鹿児島県生まれ。67歳。1970年、小松製作所に入社。1977年、3人で流機エンジニアリングを設立。1990年、同社代表取締役に就任。1998年、「建災防ずい道等建設工事における粉塵対策に関するガイドライン及び換気技術指針策定委員」。2009年、「建災防セーフティエキスパート」。2011年、トンネル専門工事業協会理事。

※橋梁通信2018・10・1号掲載