橋に魅せられて 夕張市 熊谷修さん

最後は人の力 若手にノウハウ引き継ぎを

物は全体的に古びている。正面玄関や壁面の化粧板がはがれたまま。中は薄暗い。2006年に財政が破綻した夕張市役所の庁舎で、しかし橋梁チームは踏ん張っている。

土木水道課は、総勢11人。道路・橋梁、河川、都市公園、上下水道等と、幅広い分野を担当する。

財政が破綻した時は、土木課(当時)の土木係長として現場を指揮していた。息子2人にこれからお金がかかる時期だったが、給与は4割カットされた。

夕張で生まれ、育った。父親は炭鉱営繕の大工。幼い頃からものづくりが好きだったこともあり、夕張工業高校を卒業後、総合建設業(東京本社)に7年間勤務した。当時の上司や同僚は、「帰ってこい」と度々誘ってくれたという。

それでも市に残った。「担当した橋や道路等が数多くあり、そして何より故郷に愛着がありました。この12年を正直に言えば、あの時の残るという決断を、後悔したことがなかったかと言えば、うそになりますが」。今は笑いながら当時を振り返る。

市職員が大量に退職していく姿を、日々増え続ける仕事をこなしながら、じっと見つめていた。残る人、辞める人。皆に生活がある。何が正しいのか、簡単な尺度では測れなかった。

炭鉱街として栄えた市の人口はピーク時12万人を数えたが、現在8211人(9月末)に減った。市はコンパクトシティを目指し、必要な部分に予算を集中的に投資している。

例えば、市内唯一の小学校の壁面は美しく塗装された。そこへアクセスする道路橋と人道橋は、児童の安全を守るために架け替えが計画されている。

橋ではまた、市管理78橋のうち、残す橋、直す橋、手放す橋を幾度となく検討している。橋梁定期点検では市直営で5橋を実施し、自らも若手職員を連れて現場に赴いた。

「最後は人の力です。今は自分が持っているノウハウを、少しでも若い職員に引き継ぎたい一心ですね」

定年まで1年を切った。59歳。

(土木水道課長)

※橋梁通信2018.10・15号掲載

 

 

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