片山英資氏② 土木技術者 自ら伝え 少しずつ動く 世の中

土木と社会の「壁」を感じてから、片山英資さんが最初に仕掛けたのが、市民による現場見学会だった。でも、「見学会」なんて言葉は使わない。題して「大人のアスレチック」。博多の橋で一番高い所に登ろうと呼びかけたのだ。その成功は、技術者が自ら社会に伝えることの手応えを初めて感じさせてくれた。そして、「ツタワルドボク」の今日に至る活動の源流となった。

そもそも興味のない人たちに、どうやって来てもらうのか

良かれと思って発表した高速道路のメンテナンス計画が「無料化先送り」と報道されたことで、土木技術者として真摯に技術と向き合っているのだから、それでいいだろうという姿勢はまずいと思いました。

高い橋の上でパシャ。「大人のアスレチック」参加者の体にはロープが(ツタワルドボク提供)

市民の理解を得ないと、工事に対して反対や苦情が多発して夜間工事も進まず、私達が目指したメンテナンスはできません。「無料化を先送りした工事やんけ、これ」と言われるだけです。

で、どうしようか。チームの皆さんと話をして最初に企画したのが、現場の見学会でした。越権行為なのですよ、本来は。公社には、総務・営業部門がある訳ですから。でも、メンテナンス部門が自分でやります、と。私が変人扱いされる理由の1つなのですが。

場所は、福岡高速の荒津大橋。博多港に架かる斜張橋で、ランドマークです。

博多のランドマーク荒津大橋(ツタワルドボク提供)

イベントのタイトルは、「大人のアスレチック ~福岡一高い橋にのぼろう~」。変わった名前でしょう。面白くなければ、世の中だれも注目してくれません。

そんな名前を、私たちだけで考え付いた訳ではありません。好奇心の塊のような私の性格もあって、異業種の方と酒を飲んだりしていたので、市民大学「福岡テンジン大学」を知りました。市民が生徒にも先生にもなって、福岡の町のこと、文化や歴史を学んでいるNPO法人です。そこの学長(岩永真一氏=複業フリーランス)に「都市高速を町の学校にしてほしい。私が先生になる」と話し、コラボレーションしました。

そもそも興味のない人たちに、どうやって来てもらうのか。土木の人は真面目で、「橋の劣化見学会」とか、「補修現場見学会」といった名前をつい付けたがります。その時点で、興味のない人は来ません。一見ちゃらちゃらした言葉を、真剣に創り出す必要があります。

(中略)

この前まで「無料化先送り」と批判していたマスコミも、テレビは夕方6時台に「都市高速はメンテナンスに頑張っている」と7分間も放送し、新聞は半ページを使って維持管理の重要性を書いてくれました。

こうした経験で世の中は少しずつ動くのだな、土木技術者も伝えることができるのだな。そう思うことができました。

(全文は「橋梁通信」11月1日号でご覧ください)