挑戦者たち クリテック工業社長 若林勇二さん

人脈営業から新規開拓で活路 「お客様、社員の幸せ」掲げる

橋梁用伸縮装置の基礎から分かる総合情報サイト「伸縮装置Navi」を運営するクリテック工業(本社・東京都港区)。父親を継いで、3代目として率いる若林勇二社長(48)は、異業種から未知の世界に飛び込み、様々な挑戦を重ねてきた。

挑戦を続ける若林社長

業界未経験というハンデからの挑戦が、今日のクリテック工業を作り上げた。

父親が経営するクリテック工業に入るつもりは全くなかった。前職は人材派遣会社や出版社の営業。華々しい実績を上げていたが、「会社は私の思いを実現できる場ではない」と思わせることがある時起こり、周囲の勧めもあってクリテック工業への転職を考えた。

橋梁用の伸縮装置は、全く知らない世界である。まずは市場調査をしたのが、この人らしい。競合社は20ほどだが橋の数は70万もある、伸縮装置の寿命は20~30年(当時)だから一定のサイクルで仕事が発生する――。ビジネスチャンスを感じて飛び込んだものの、戸惑いがあった。

「人脈営業なのです。知人に担当者を紹介してもらう、会って商談をする、という流れ。受注率は高くても、利益率が低かった」

だから、父親に「業界では通用しない」と言われても、新規開拓に挑み続けた。トップセールスの実績を上げる。最初は冷ややかな目で見ていた社員たちも、いつしか若林さんの営業手法を見習うようになっていた。2007年(平成19年)、満を持した形で社長職を継いだ。

社長としても、新しい試みに挑んできた。会社の基本方針には、「お客様の幸せ」に続けて「社員とその家族の幸せ」を掲げる。週休2日制を早々と導入し、土日祝日の工事はなるべく行わないようにした。新卒・女性社員の採用にも努め、すでに新卒と女性が社員の3分の1を超える。事務だけでなく、設計や施工管理にも就いている。

伸縮装置の調査~施工まで 伸縮装置業界トップめざす

社員教育も熱心に挑んでいる。「目標は業界トップシェア。それには人間力の高い『人財』が必要」と考えるからだ。

例えば、他社の優れたやり方を学ぶ「ベンチマーキング」。今年6月には、休日の多さやノー残業などで知られる電気設備資材などの製造販売業「未来工業」(岐阜県)に若手社員を派遣した。

「節電対策 プラプラと廊下や会議室に垂れ下がる電源スイッチのひも」「すぐ目に付くところにある社是『常に考える』のロゴマーク」

若手社員のそんな感想は、クリテック工業の業務改善に生かされそうだ。

お客様を招いて開く毎期の経営計画発表会。その運営に若手社員を起用しているのも異例だ。昨年10月の発表会では、入社2年生が開会を宣言。続いて、1年生が経営理念の唱和の発声役を務めた。業務に対する主体性を自然と養えそうだ。

クリテック工業はいま、伸縮装置のメーカーとして調査、設計、製造し、さらに販売から施工までワンストップで行うのが強み。業界トップシェアを目指し、次は何に挑むのだろうか。

旅行が趣味。「橋を見ると、つい立ち寄ってしまう」と笑った。

※橋梁通信2018・9・1号掲載