主張(19) 国民1人ひとりに訴える発想 木戸健介さんの足跡をたどる 10

ジャーナリスト木戸健介さんが7年前、国土政策研究所で行った講演「公共事業とメディア」をたどり、メディアの昨今の論調にも触れながら、公共事業に対する社会の理解を高める方途を考えてきた。

講演の最後を、メディアへの注文で閉めるのかなと漠然と考えていたら、違った。

(中略)

「私たち日本人は年々、心の余裕を失い、目先の利益を求めて右往左往する傾向が顕著になっている」と述べ、こう続けた。

「国会議員にしても、首長や地方議員にしても、有権者の顔色をうかがうことに汲汲とし、身替りが早いというか、いとも簡単に主義主張を変えるようになっています」

これは、何を意味するのか。木戸さんは「従来、公共事業に関する情報を発信する場合に、みなさんが主に念頭に置いていたのは、国会議員や首長、地方議員だったはず」として、「しかし、頼みの綱にしてきた面々がこういう状況では、何とも心もとない限り」と嘆いた。

では、どうするか。木戸さんは「本当に拠り所にすべきは、健全な良識と判断力を兼ね備えた国民」だと訴え、「国民1人ひとりに向かって訴えかける、新たな発想を身に着けてほしい」と呼びかけた。

公共事業に対する社会の理解を深めるには、市民への訴えが必要との観点は、土木学会の様々な広報、また片山英資さんらの「ツタワルドボク」の活動などに生かされている。

木戸さんは道路協会刊「道路」の編集にも携わり、毎号の特集について、感想を寄せていた。

16年4月号は「橋梁の次の世代への引き継ぎ方」を特集した。近接目視の点検が義務付けられ、担当者は「目の前の仕事をこなすだけで精一杯」だろうが、モノとしてだけでなく、橋の景観的魅力、歴史的・文化的な価値の継承にも取り組んでほしいと望んでいた。

残念なことに、「道路」の文章は昨年5月号が最後だった。病気で急逝したと聞く。還暦前後だったはずだ。(このシリーズ終わり)

(全文は「橋梁通信」12月15日号でご覧ください)