使用実績3万㎥を超える ダクタル橋 酒田みらい橋から 日本各地に

大成建設などが展開

超高強度繊維補強コンクリート「ダクタル」は、道路橋・歩道橋・鉄道橋への採用が20件を超え、使用実績量が約3万㎥を超えた。大成建設(東京都新宿区、村田誉之社長)が2002年、日本初のPCダクタル橋として建設した「酒田みらい橋」の供用から16年が経過し、広がりを見せている。

日本初のPCダクタル橋「酒田みらい橋」(大成建設提供)

都心の鉄道桁架設が完了

大成建設は昨年から今年にかけ、東京都世田谷区の京王井の頭線・下北沢駅付近で、ダクタルを用いた鉄道橋4橋(桁高0・8m)の架け替え工事を実施し、架設を完了させた。

今回の工事は、東京都と小田急電鉄会社が事業化した①連続立体交差事業②小田急小田原線の複々線化事業―に伴うもの。京王井の頭線と小田急小田原線の鉄道路線交差部にあたる同駅付近で、京王電鉄会社が井の頭線の既設橋脚を撤去し、新しい鉄道橋への架け替えを行った。

ダクタルを用いた鉄道橋の架け替えは、三重県の三岐鉄道・萱生川(かようがわ)橋梁に次いで国内2例目となった。

今回は都心の繁華街で、軽量化、分割施工、限られた施工時間、営業線の近接工事など数々の制約があり、それらをクリアするためダクタル・ホロー桁が採用された。

構造検討は、前回と同様、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)による指導のもと、設計を復建エンジニヤリング、施工を大成建設が担った。今後、首都圏など大都市圏での鉄道工事に適用が可能なことから、更なる採用増が見込まれる。

橋継続調査で健全性確認

大成建設はこれまで、国内でPCダクタル構造物を18件施工してきた。そのうち「酒田みらい橋」(供用後16年)と「東京モノレール昭和島車庫線桁」(同11年)では、継続的に経年変化を追跡調査している。

調査は、目視確認、強度試験、塩化物の侵入深さ等のほか、近年ではモアレカメラを用いた固有振動数等を計測。いずれも、健全性を確認しているという(別稿参照)。

同社は2007年、土木研究センターに委託して輪荷重走行試験を実施し、ダクタル床版の疲労耐久性を確認済だ。

同社・橋梁設計・技術室の利波宗典室長は「これまで実績を重ねながら知見とノウハウ、データを蓄積してきた」とし、「高性能なダクタルを採用いただくことで、部材の軽量化や形状の自由度などの利点を最大限に活かし、鉄道、高速道路、空港など交通インフラ施設の更新工事に貢献していきたい」と述べている。

※ダクタル 超高強度繊維補強コンクリート(UFC)。設計基準強度が普通コンクリートの約4倍の180N/㎟を持つ。鉄筋の代わりに鋼繊維を使って部材厚を薄くし、軽量化が図れる。緻密構造により極めて高い耐久性もある。部材厚8~15㎝、ス パン 50m超の桁など従来のコンクリートでは達成できなかった構造が実現できる。

酒田みらい橋 長期強度・耐久性を確認

酒田みらい橋の箱桁内面

酒田みらい橋は2002年、山形県酒田市内を流れる新井田川に架設された歩道橋。橋長50・2m、全幅2・4m、桁高0・55~1・56m。単径間PC箱桁橋(全外ケーブル方式)。橋のすぐ前に本社を置く前田製管が発注者(プライベート橋)となり、同社、大成建設、太平洋セメントの共同事業として施工された。日本コンクリート工学協会賞、土木学会田中賞、プレストレストコンクリート技術協会賞のいずれも作品賞を受賞している。

上床版は厚さ50㎜、ウエブ厚さ80㎜と薄く、「究極の部材厚さ」(前田製管資料)とされる。これにより、自重は通常のPC桁に比べて約5分の1と大幅に減少。工費も通常より10%低く抑えられた。床版やウエブはもとより、定着部に至るまで、鉄筋は一切使っていない。

この橋は設計・施工のデータを得るための実験橋で、現在も継続して長期強度と耐久性調査が行われている。

これまでの調査では、ダクタルの圧縮強度の継続的な増進が認められ、曲げ強度には変化が見られないことが分かっている。実橋のウエブから採取した供試体の塩化物イオンの浸透深さは1㎜に満たず、長期的な強度、耐久性を有する材料であることが確認された。

今年は15年時の調査が行われており、モアレカメラによるたわみ、固有振動数の計測などを行い、近日、調査報告を行う予定だ。