「デジタルツイン」 橋梁の傷み 素早く診断 阪神高速 

東神戸大橋 コンピューター上に再現

東神戸大橋の写真(左)とデジタルツインで再現した大規模な解析モデル

阪神高速道路会社と東芝は、実物をコンピューター上に再現する「デジタルツイン」により、橋梁の経年劣化や災害時の損傷などをシミュレーションで調べる超大規模解析技術の開発に取り組んでいる。

(写真は阪神高速提供)

デジタルツインは実物をコンピューター上の仮想空間に再現する技術。現実をデジタルで複製する意味で「双子」になぞらえる。

コンピューター上の再現といっても、従来は橋梁の複雑な形状を簡単なモデルに置き換えるだけだったが、デジタルツインはまったく同じモデルを構築、センサーによるモニタリングで橋梁の動きを再現して状態を把握するもので、その結果に基づくメンテナンスの効率化が可能になる。

実証研究のモデルに選ばれたのは、5号湾岸線の東神戸大橋(神戸市東灘区)。全長885m、片側3車線の3径間(支間割200+485+200m)連続斜張橋で、94年に開通した。

竣工図を基に、コンピューター上で部材を一つひとつ製作して組み立て、要素数約8千万、自由度約5億(各要素は3並進自由度と3回転自由度の計6事由度)という超大規模な解析モデルを構築した。橋梁のようなインフラ構造物を対象にした構造解析では、過去に例がない規模だという。

東神戸大橋には、加速度計、ひずみゲージ、変位計など各所にセンサーを設置した。

18年3月に24tの荷重車による積載試験を実施。上下弦材格点での変位量を評価したところ、最大変位(荷重車が橋の中央位置)は7mm程度で、センサーによる計測値とシミュレーション上の数値が一致、解析モデルの精度の高さが確認された。

現在は振動を常時計測するとともに、季節ごとの日照・温度変化の影響もデータを蓄積中。6月に大阪府北部地震、9月には台風21号の襲来もあり、災害時のデータも収集された。

今後は、耐荷力、耐風、部材劣化、飛来塩分の影響などを調べ、モデルの橋を他にも広げていく方針だ。

阪神高速の篠原聖二・技術推進室課長代理は「人手で点検をすると、全体の9割には損傷がない。橋梁デジタルツインによる超大規模解析モデルにより、損傷の可能性が高いところを効率的に見つけられるメリットが期待できる」と話している。

阪神高速の総延長は約260㎞。高度経済成長期の1964年から相次ぎ開通し、うち5割は5年後に建設から40年以上となる。老朽化が進むなか、労働力人口の減少を見据え、維持管理の効率化が課題。地震や台風などの災害時の危機管理も社会インフラの使命となっている。