橋に魅せられて エスアールジータカミヤ 池田輝次さん

「安全な足場との一体感が品質と無事故に」

「現場で事故を防ぐには、まず安全な足場が欠かせません。そのうえで、全員が決め事を守る必要があり、決め事を守るには一体感が重要です」

そんな熱弁が1時間半、ぶっ通しで続いた。静岡市にある橋梁補修会社「コウノ」で今年9月、足場と塗装に関する講演をしていた時のこと。同社の香野智章社長が休憩を求めたほどだった。「すみません。力が入り過ぎました」。頭を下げると、聴講者に小さな笑いが広がった。

1946年に長崎・佐世保で生まれた。高校卒業後、佐世保重工業に入社。原図、生産設計、工事計画を経て、30代で橋梁架設工事の所長になった。

初の吊橋架設現場で、とび職の親方の迫力に圧倒された。こちらの指示はすべて聞いてくれるが、親方からは話しかけてくれない。「一体感がなければ、安全な仕事ができず、良い成果物が収められない」。先輩からの教えを実践した。

冬の朝、一番早く現場に出てストーブを炊いた。夜間工事では湯を沸かして現場作業員をねぎらった。自ら鍋を用意して懇親会を開き、作業員1人ひとりに感謝の言葉をかけたことも。親方もいつしか話しかけてくれるようになり、事故を防ぐ現場の知恵を教えてくれた。

45歳で三菱重工工事に転職後もその姿勢を保ち、三十数年で吊橋やアーチ橋など工事計画を含め100を超える橋梁架設工事を無事故・無災害で終えた。「すべて職人さんのお陰」と振り返る。

72歳の現在は、長崎県建設技術研究センターに客員研究員として所属するかたわら、エスアールジータカミヤ営業本部・顧問を務めている。

「桁補強や鋼橋塗替え塗装の品質確保には、安全に近付ける足場があってこそ。逆に言えば、足場を使用する異業種の作業員が作業しやすい足場設備を確保してこそ、品質の高い仕事ができます」。これが、長年、工事を経験してきた結論だ。

開口部や段差がない平坦な作業床が特徴の次世代吊足場「スパイダーパネル」や「V―MAX」を、更に進化させ橋梁工事に普及させることが「最後のご奉公」だと決めている。

(営業本部 顧問)

※橋梁通信2018・12・1号掲載