社長放談 IHIインフラシステム 川上剛司社長

IHIは挑戦、苦労を評価する企業

IHIインフラシステム(略称・IIS)の川上剛司社長は、IHI執行役員(社会基盤・海洋事業領域副事業部長)も兼務し、IHIグループ全体の橋梁・水門を統括する立場にある。社長は橋梁通信8月15日付で「グループの強みは、海外にある」と話し、10年後に現在の10倍に相当する「売上高1000億円規模に成長させたい」とした。大小多くの建設業者が尻込みする海外工事に、どのように活路を見いだしているのか。その意義を中心に話を聞く。

 

「トルコ共和国に赴任時、平和そのものであったイスタンブールやアンカラでテロが起こるようになりました。妻から『イスタンブルールへは、どのルートで行けば安全だろうか』という相談を受けたことを今も覚えています。私自身も2016年にクーデターが発生した時は、空港近くで避難しておりました。海外では、自分たちが生活している周辺でも様々なリスクが身近に潜んでおり、想定外の事象が度々発生します。

この想定外の出来事に、いかに対応していくか。これはプロジェクトでもそうですが、人生経験としても、とても重要なことだと思います。海外では対処すべき術を、知らず知らずのうち身につけているように思います。

海外で培ったそうしたノウハウやリスク回避能力、プロジェクト遂行能力は、国内外のあらゆる仕事に生かされ、会社に還元されます。このノウハウを数多く持つ技術者の集団、それがIHIの強みだと思います」

IHIグループの橋梁部門には、「4拠点構想」がある。メインと位置づける「日本」以外に、「アメリカ」、「ヨーロッパ」、「アジア・その他」の4市場で、いずれもプレーヤーとして関与していく構想だ。

特に新設吊橋は、国内外を問わずに「必注」として取り組んできた。

昨春に発表したイタリア大手建設会社アスタルディ社との提携も、海外でのプレゼンス力を高める取り組みの一環である。同社とのJVで昨年1月にはルーマニアでの吊橋受注にも成功している。

海外 何がリスクかさえ 分からず

「海外プロジェクトは現地に入ってみないと、何がリスクかさえ分かりません。海外では誰しもが、何かしら失敗を経験していると思います。私自身もプロジェクトマネージャーとして臨んだイズミット湾横断橋で、キャットウォーク(ケーブル架設用の足場)の破断事故がありました。当時の失敗を今後のプロジェクト運営の教訓として、社員の認識を高めていかなければなりません」

IISは2015年3月、施工を手がけていた「トルコ・イズミット湾横断橋建設工事」で、主塔間に架設していた主ケーブル架設用足場・キャットウォークが破断、海面下に落下するという事故を起こした。当時、川上社長は、同工事の最高責任者の立場にあった。

(以下、略)

会社を残すための人事に 橋梁はプレゼンス高める

「この数年で基盤を作ること、それだけが私の思いです。今の部長たちには、『君たちが現在大事にしている人材だけを見ないでくれ。10年下の人材を育てて欲しい』、『会社を残すことだけを考えて欲しい』と伝えています」 

(中略)

「IHIにとって、橋梁事業は、グループの中でも挑戦できる領域の一つであり、挑戦するために動ける多様な人材がそろっている部門です。その国の重要人物をはじめ、発注者と直接の接点をもちながら仕事をしていける事業は、グループの中でも限られています。IHIとしてはプレゼンスを高められる部門だと感じていますし、今後さらに成長する事業であると思っています」

川上剛司(かわかみ・たけし)氏  1963年大阪府生まれ、55歳。89年徳島大学大学院工学研究科建設工学専攻修了、石川島播磨重工業(現IHI)入社。2009年IHIインフラシステム(IIS)技術本部プロジェクト部長、取締役IZMITプロジェクト部長、海外PJ室長などを歴任。17年4月IIS代表取締役社長に就任。18年4月IHI執行役員(社会基盤・海洋事業領域副事業部長)に就き、現在に至る。

(全文は「橋梁通信」2019年1月1日号でご覧ください)