挑戦者たち カボテック社長 阿部茂且さん

経済性設計が強み 3年で5倍の拡大に挑戦

カボテックの主力「CCFP・CABOCON(カボコン)工法」は、鋼桁やRC床版の補強工法として知られる。採用実績は約100件。接着したカボコンを外鉄筋とする「終局応力状態設計法」をいち早く採用し、炭素繊維量を極限まで減らせる経済的な設計を強みにしてきた。社長の阿部茂且さん(51)は、炭素繊維メーカーとしての事業戦略を描く。「3年後、年間実績5倍の1万mに出荷を伸ばしたい」。更なる挑戦が始まった。

更なる挑戦が始まった阿部社長

カボコンの技術を守って 36歳で起業 工法を担ぐ

カボコン工法はなぜ、あえて炭素繊維の出荷量が減る考え方に挑み続けてきたのか。

三菱、新日鉄住金、東レなど、名だたる企業の先行工法があるだけに、「後発の弱小だから、差別化しか道がなかった」と苦笑する。

徳島県内の地場ファブで営業課長職にあった18年前、稼げて世のためになり、少人数で開始できる商材を探した。「まさかパンを売る訳にもいかない」。行き詰まった時、この工法に巡りあった。

「設計意図を現場で実現できるため、時の経過とともに認知されるのは間違いない」と、ほれ込んだ。

当時、工法の普及を進める協会があり、炭素繊維と接着剤の各メーカー、施工企業の3社が母体だった。積極的に協会活動に参加したところ、行動力や調整力が買われ、すぐ事務局長として汗をかくことになった。

2年後、母体3社のうち1社の経営不振と同時に、協会は瓦解する。所属会社の上司からも、売上が上がらないことを指摘され、工法からの事実上の撤退を勧告された。

「手を引かせていただきます」。そう言って関係先を回ったがあちこちから「技術を守ってほしい」との思いをぶつけられた。

このままでは、工法そのものが失われてしまう。惜しいという気持ちが高まっていった。

折から、徳島県内の設計コンサルが折り込みを進めてくれていた時期でもあった。

「もう1歩で芽が出るのに・・・」

悩み抜いた末、自己資金200万円で起業を決意。36歳だった。

接着後、近接目視も可能 会計検査が追い風に

当初、正規ルートからは、接着剤1缶、カーボン1枚すら買えなかった。

「情けないのが、そこでした。資本金が少ないとモノが買えないことを学びました」

独立後、最初の仕事は、鹿児島県内の温泉施設の天井補強工事だった。ツテをたどって、ようやく手にした接着剤3缶とカボコン1ロールを現金代引きで手に入れ、2泊3日で施工指導に行った。

「交通費を含めると赤字でしたが、無事に施工を終えました」。帰りの飛行機で飲んだビールの味が忘れられない。

橋梁で最初の採用は、徳島県管理「大用知橋」の災害復旧工事。2004年の台風28号による土石流で損傷し、通行不能となっていた。床版下面の補強工法として、施工延長100m分のカボコンを3日で貼り付け、早期の通行再開に貢献した。

最初の3年は資金繰りに苦労したが、次第に実績が増え、現在は年商3億円を超えた。「力をつけないとだめですね。8年前からは、ぜひ接着剤を買って下さいと、メーカーから言われるまでになりました」。

会計検査院が数年前、全国の自治体に炭素繊維シートの過剰設計を指摘した。しかし、経済性を重視した終局状態設計法のカボコン工法は、その指摘と無縁だった。

取引先の設計コンサルから「カボコンを採用して良かった」と感謝されたことは、起業後の喜びの1つ。「カボコン工法の設計思想に時代が後からついてきたと思いましたね」。茶目っ気たっぷりに笑顔を見せた。

年間出荷量の2000mの在庫を常に板厚ごとに保有している。「施工と販売の体制を整備して、3年後には年間1万mの出荷を目標にしています」と、抱負は大きい。

「カボコン貼り付け後も、板状のため近接目視点検で母材の確認ができる。また、追加補強が必要な場合は、カボコンをそのままにして追加貼付ができる点など、優位性はますます高まっています」

▼鋼材の当て板補強を視野 「炭素繊維による世界初の鋼材補強は、カボコン工法による宮城県『桜の目橋』横桁補強(2002年)でした。ポルシェのボンネットは、4方向の炭素繊維で成形されています。カボコンも1方向の基本製品に加えて2方向、4方向にも対応します。4方向の新しいカボコンは、腐食などで断面欠損した鋼材の補強を、通行止めなしで作業できる点が特徴。道路管理者が現在困っているのは、ガーターエンド(端支点部)の補強で、主部材だけど応力部材ではない箇所にカボコン工法はいかがでしょうと、提案しています」

「鋼桁の部材を取り替えると通行止め等の規制が必要になりますが、カボコンを活用することで、そうした経済的損失を回避できます。世の中にご迷惑をかけないことは、どれだけ有益でしょう」

▼適用限界 「部材長60mを1発で貼ることと、添接部の凹凸をいかにクリアするかということが目下の課題です」