自治体と中小企業をマッチング 東大阪橋梁維持管理研究会 坂野昌弘・関西大教授ら 「橋守」も

大阪府、東大阪市、関西大学、近畿大学、南海電鉄グループと京阪神の中小企業と、産官学が連携し、

坂野教授

2014年に立ち上げられた「東大阪橋梁維持管理研究会」(会長=坂野昌弘・関西大学教授)。予算と人材が不足する地方自治体と、高度な技術力と軽快な対応力を併せ持つ中小企業をマッチングさせ、

橋梁の維持管理に役立つ技術開発に取り組んできた。17年には「橋守支援センター・関西支部」として法人化し、現在は松田浩・長崎大学教授を中心に創設された「道守」制度について、関西、関東での導入を模索している。地方の目線でインフラの安心・安全の確保と地域活性化を目指し、橋梁維持管理の未来に向けて前進する坂野教授の取り組みを追った。

「東大阪橋梁維持管理研究会」で実用化に成功したアイテムは、主に2つある。橋梁用のポータブル多機能掃除機「スイートル」と下面補強板締結用ボルト「スレッド・ローリング・スクリュー」(以下TRS)。いずれも中小企業庁の補助事業に採択されて開発を進め、特許を出願。TRSはこのほど取得がかなった。

橋梁用ポータブル掃除機 「スイートル」販売 好評

スイートル(東大阪橋梁維持管理研究会提供)

橋梁用ポータブル掃除機「スイートル」は、南海電鉄グループ会社のシーエス・インスペクター(大阪市、湯口俊夫社長、以下CSI)が、現場点検の際に支障となるゴミや土砂を除去する掃除道具の必要性を提案。友定建機(東大阪市、前川信治社長)が中心となって研究が始まり、製品化が実現した。16年からCSIが販売代理店となって全国の橋梁管理者、点検・補修業者等に販売されている。

特徴は、コンクリート片や汚泥も吸引できる強力なパワーと、過酷な使用条件にも耐えられる丈夫な構造。吸い口のアタッチメントは5種類、ホースも5mと10mの2種類が用意され、これらを交換することで用途の幅を広げられる。また、本体に土嚢袋を装着できるため、吸い集めたゴミは移し替え不要で、そのまま処理できる。

坂野教授は「手が届きにくい狭い箇所、また障害物があっても、強力な吸引力できれいに掃除ができる。土砂に埋もれていた支承が現れた現場もあり、有効な商品との評価を受けている」と語る。

 

桁下面補強工法用ボルト 「TRS」を新開発

TRSを用いた下面補修工法は、舗装を掘り返すことなく、橋桁下から当てた補強板を締結できる。代替できない路線を抱える本州四国連絡高速道路会社に加え、尼崎市の巴製作所、東大阪に支店を持つロブテックスファスニングシステムの2社が中心となって開発された。

TRSを用いた工法は2つある。鋼床版の下面補修工法とUリブ鋼床版のビート亀裂に対する補修工法。

まず鋼床版の下面補修工法は、4千カ所の塗膜割れが発見されたものの交通量が多いため通行止めができない国道2号の姫路大橋で、16年度から実証実験が行われた。

横桁下フランジ貫通部と垂直補剛材上端部、それにウエブギャップ板上端部に発生する亀裂に対する予防保全対策を試験施工、応力測定をした結果、疲労寿命が大幅に向上したことが証明されたという。

坂野教授は「結果を踏まえ、来年度には姫路大橋でTRSを用い、全面的な補修工事が発注となるのでは」と期待している。

二つ目の工法は、本四高速・戸崎高架橋でUリブ鋼床版のビート亀裂に対する試験施工として、Uリブ側は高力ワンサイドボルトф20「MUTF20」による摩擦接合とし、デッキプレート側をTRSTRSф16による支圧接合として行われたもの。

有効性がすでに確認されており、今後、同様の補修工事に本格的な採用が見込まれるという。

NPO法人化へ再編 「道守」制度導入も

17年には「NPO法人橋守支援センター関西支部」として再編。同法人本部(千葉=阿部允代表・元BMC社長)と静岡支部(長山智則理事長・東京大学准教授)と行動を共にすることで組織力を強化した。

さらに現在、人材育成を進めるため、長崎大学副学長の松田浩教授・インフラ長寿命化センター長が長崎県とともに創設した国土交通省登録第1号の「道守補(=インフラ点検員)」制度について、拠点のある関西、中部、関東地域での導入を模索している。「構造物の維持管理をする上で、最初の点検が最も重要。管理者、地元の補修業者も含めて、正確に点検できる人が増えれば品質の確保も可能となる」という。

「道守」制度は、橋梁については鋼・PCを問わない。坂野教授は、5月に申請、8月下旬に講習会、9月下旬に認定試験。年度末に結果発表と認定手続きというスケジュールで進めたいとの意向だ。

大阪・関西から全国へ。同じ問題を抱える同志と共働しながら、地方自治体管理の50万橋について、適切なメンテナンスを求めて活動を続けている。