橋が世界を統合・分断する フォト・ドキュメント出版 原書房

 橋は世界を結び、またある時は断絶の舞台になることは、本紙3月1日号1面コラム「横丁」でも指摘した。そんな橋の姿を世界9か所で取材したフォトドキュメント「世界の統合と分断の『橋』」が、原書房から刊行された(写真)

「人間は壁を多く作り過ぎ、橋は十分に作っていない」。力学を確立したアイザック・ニュートンのそんな言葉に導かれ、著者のアレクサンドラ・ノヴォスロフ氏は先に「世界を分断する『壁』」を著し、その続作として本書を世に送り出した。フランスの大学で国際連合や平和維持活動を専門としている女性研究者だ。

舞台は、旧ユーゴスラビア、ヨルダン川、アフガニスタン、中国と北朝鮮そして米米国とメキシコ国境など。著者は丹念に歩いて撮影し、インタビューした。例えば、パレスティナの地とヨルダンの境・ヨルダン川に架かるアレンビー橋(125m)。パレスティナ人にとって、「外の世界との唯一のつながり」である。「彼らにとっては命綱」「占領され、管理され、制限され、自分たちの時間も人生すら思い通りにならないパレスティナ人の状況を象徴する橋になった」。

これまで3回破壊され、現在の橋は2001年、日本政府の援助でヨルダンとの友好のあかしとして再建された。現地の人は「日本の橋」と読んでいるという。

書物の各所に橋に関する断章が散りばめられ、ている。幾つか紹介する。

イタリアの作家エルリ・デ・ルカ「橋は温かみのある装置である。2つの岸をつなぎ、対立関係をまたぐ。どんな形状の橋でも私は好きだ」

イスラム世界の政治家アーガー・ハーン「調和が機能しなくなり、紛争が続くと、一般的に、橋を破壊することが火急の目標の1つとなる。しかし、平和といやしがやってくると、橋の建設や修復が、われわれの進歩の目安となる」

アルバニアの作家イスマイル・カダレ「橋とは、人間がつくった無数の構造物のなかで、人間の不安、恐れ、希望、恐怖、そして夢の一部を託すものだ」

「橋」を切り口に、移民、貧困、格差、争いなど世界の実相をこれほどまで解き明かすことができるのか。感嘆すべき1冊である。

児玉しおり訳。3200円(税別)。

※「橋梁通信」2019年3月15日号掲載