国内初 斜ケーブル取替工事が完了 熊本・桑鶴大橋 日立造船から報告

(左から)福岡さん、中村さん

「平成28年熊本地震」から、今月14日で丸3年。難工事の1つだった俵山トンネルルート(県道28号熊本高森線)「桑鶴大橋」(くわづるおおはし)復旧工事が完了した。担当した日立造船・諌山工業JVの福岡直樹・現場代理人、中村友三・監理技術者(いずれも日立造船)から工事概要の報告が寄せられた

熊本地震は、4月14日夜の前震と同16日未明の本震で、現在の気象庁震度階級が制定されてから初めて震度7が2回観測された。

同ルートは、震度7を観測した西原村と震度6強の南阿蘇村を通っており、多くの箇所で災害が発生、道路が寸断された。

道路上に点在する橋梁群の復旧には高度な技術が必要なこともあり、国が熊本県からの要請を受け、大規模災害復興法に基づく国の代行事業として災害復旧を進めることとなった。本稿は桑鶴大橋の復旧工事について報告する。

本橋は、1998年(平10)竣工の鋼2径間連続斜張橋で、縦断勾配4・80%、横断勾配1・85~5・00%、平面線形はR=350mの曲率を有し、A1‐P1間は100m、P1‐A2間は60mの不等径間な橋梁。

不等径間X主塔の斜張橋

主塔形式は、上部がX(エックス)の形状になっており、斜ケーブル全16本が、異なる長さ・異なる据付角度である。

また、A2橋台部の支承には常に上揚力が作用するため、水平力と上揚力に抵抗する支承として設計されていた。

本橋は地震で支承が破損、主桁全体が横ずれするとともに、支点部の主桁が座屈、支間長の短いA2側主桁端部が浮き上り、上段2段の斜ケーブルによれが生じた。

下部工も、主桁衝突による胸壁・翼壁の破損や杭基礎に亀裂が生じるなど、多くの部材が損傷した。

上部工は、A2部支承の破損による桁の浮上りと斜ケーブルの緩みから、主桁の一部で応力が降伏点近傍に達していると推察された。復旧作業では、主桁の応力を改善しつつ復旧するよう、立体構造解析モデルを用いたシミュレーションを元に作業手順を決めた。

斜ケーブルは上段1~2段によれが生じたため、素線の破断が懸念された。一方、下段3~4段は張力計測や目視点検等で、弾性領域内であり変状が見られなかったことから、利用可能と判断し、上段1~2段の合計8本を交換する方針とした。

鋼斜張橋の斜ケーブル取替工事は、国内初の事例だった。

斜ケーブルの撤去状況

上部工の復旧作業は、①仮橋設置工②ベント設置工③ジャッキアップ工④主桁横移動工⑤主桁補修工(撤去・取替)⑥支承取替工(撤去・取替)⑦斜ケーブル撤去・架設工⑧ベント・仮橋撤去工⑨上揚力、負反力対策工、斜ケーブル張力調整⑩支承固定工――の手順で行った。

下部工はA1橋台とP1橋脚で、ボアホールカメラによる損傷確認をした結果、杭に亀裂が確認されたため、増し杭による補強を行うことになった。両橋台の胸壁・翼壁も主桁の衝突で破損したため、再構築することになった。

A1橋台での復旧作業は、①土留工②胸壁、底版部分撤去工③増し杭④底版増築・胸壁再構築――の手順を実施した。

 

仮桟橋とベント設備

同ルートは被災が大規模かつ特殊で、復旧には高度な技術力が必要とされたため、九州地方整備局と熊本県、専門家(国土技術政策総合研究所、土木研究所)からなるプロジェクトチーム(PT会議)が設けられ、当社を含めた桑鶴大橋の復旧方針・復旧工法の検討が行われた。

本橋の復旧方針は、主桁を被災前の形状に戻すことで、主桁応力が建設時と同等になるという考えに基づき設定されたため、各部の出来形管理と作業中の応力測定が重要となった。

各作業ステップにおいて、主桁の形状・主塔の倒れ・斜ケーブルの張力・支点反力・主桁と主塔の応力を計測、そのステップ間の変化を解析値と比較することで、施工の妥当性と安全性を確保しつつ、工事を完成することができた。

工事中、約60回の現場視察が行われるなど注目されたなか、無事完成できたのも、従事していただいた方々の努力の成果であり、発注者とPT会議メンバーのご支援・ご助言のおかげです。この場をお借りして深く御礼申し上げます。

なお17年3月、西原中学校2年生による立志式(元服にちなんで数え年の15歳を祝う行事)の一環として、現場見学会を開催。破損した支承や主桁の横ずれを間近で見学後、主塔をバックに記念撮影した。

※編集部注 本稿は全国土木施工管理技士会連合会発行の「JCMレポート2019年3月号」に掲載した福岡直樹氏の寄稿を再構成し、加筆したものです。

※「橋梁通信」2019年4月1日号掲載