SSPC年次総会報告① 「米国の防食塗装」 池田工業 池田龍哉社長

池田工業(本社・北海道北斗市) 池田龍哉社長(写真左)

SSPC Coatings+(年次総会)2019が米・フロリダ州オーランドで2/10~2/14に開催された。2015ラスベガス、2016サンアントニオ、2017タンパ、2018ニューオリンズと続き、今年で5年連続の参加となった。

多くの人でにぎわう会場(池田社長撮影)

私は主に、素地調整に関わるテクニカルセッションを中心に参加している。継続テーマが多く、発表の推移を追うと非常に興味深い。ここ数年、注目している幾つかの技術発表を紹介する。

「表面プロファイルについて私たちが知っていること、知らないこと、知るべきこと」。そんな題で2017タンパから始まった素地調整の表面粗さの話は衝撃的だった。

「表面清浄度(Sa2 1/2など)、粗さが及ぼす塗装の能力改善について、我々は感覚的にしか分かっていない。十分な素地調整面が保護塗装性能をどのように改善するのか? その仕組みは?

表面素地形状の役割と塗装性能メカニズムについて、制御された研究は今までほとんど行われていない。我々は、表面性状が塗装性能に及ぼす影響と基本的な性能特性を研究しなければならない」

発表者は米国大手インスペクター会社のCarl Reed氏。

米国はブラスト発祥の国であり、もちろんSSPCではブラストの粗さの規格を作り、厳格に運用している。それにもかかわらず、「ブラストで素地調整すると塗装性能が上がるのは分かっているが、どういう粗さがどう影響するかは分からない」と、問題提起したのだ。

日本では鋼橋修繕塗装の場合、一部の場合を除いて表面清浄度だけが重視される。鋼道路橋防食便覧に、「Rzjis80μ以下が望ましい」と最大粗さの記述はあるが、最小粗さについては書かれていない。

私も経験上、ブラストが最良の素地調整と考えているが、日本の発注者から「ブラストとパワーツールは塗装品質的に何が違うの?」と質問されたことがある。

ギザギザの絵を描いて「粗さの違いです」と答えたのだが、正しい(?)粗さとはいかなるものなのか、技術者として疑問に思っていた。

Carl Reed氏は翌年のニューオリンズで、刺さりこみとリブラスト(再ブラスト)による粗さのピーク数の減少を発表。今年のオーランドでは「研削材の種類による腐食の仕方、鋼材表面への研削材の残存、粗さなどのパラメータの関係をまとめた最新の取り組み」の継続発表が行われた。

研削材の刺さり込み

米国でメジャーな4つの研削材、つまりコールスラグ、スチールグリット、アルミナ、スタウロライトを使って、刺さりこみ具合と、刺さりこんだ研削材がそれぞれ鋼材の腐食にどのような影響を及ぼすかを計測していた。

ブラスト研削材の刺さりこみの問題はここ数年、米国でも取りざたされ、刺さりこみを含むコンタミが塗装品質に対して有害だと懸念する人達から、刺さりこみの発生しないウォータージェットによる素地調整を推進する技術発表が行われた。刺さりこみの有害無害の研究は端緒についたばかりで、今後の推移を見守りたい。

また、この研究では研削材ごとに粗さのピーク数(凸部の数)を計り、陰極はく離試験でそれぞれクリープはく離面積を計測していた。結果は、スチールグリッドのピーク数が少なく、クリープはく離面積が多く発生していた。今後の継続研究が待たれるが、塗膜との密着性は粗さの高さよりピーク数が重要だという結果である。

ただ残念だったのは、空気圧やノズルのサイズ・形状(写真から予測はつくが)、研削材の粒度などのブラスト条件が明示されていなかったことだ。

SSPCの技術セッションは質疑が盛んなため、この点は聴講者から鋭い質問が出た。

トラブル減らす可能性

回答を聞く限り、発表者はブラスト後の粗さや腐食試験に注力するあまり、大前提のブラスト粗さ作成時の条件を他人任せにしていた感じが見受けられた。

ブラストの粗さは、テーマとして面白く、刺さりこみの問題からリブラストによる粗さの形状の変化が及ぼす影響まで、範囲を広げた研究はとても興味深い。

SSPCでは他にも様々な切り口で粗さを含めた表面性状の研究が進められており、期待して推移を見守りたい。

今後、研究が進み、理想的な清浄度とピーク数、平均粗さが解き明かされれば、その数値を達成するブラストを施工することが主目的となり、塗装トラブルを大きく減らす転機となる可能性を秘めている。

ブラストは、塗膜性能が担保される素地を作るために行わなければならない。ブラストに関わる技術者として、検証したいと感じる技術セッションだった。

※「橋梁通信」2019年4月1日号掲載