調査報道「防食中毒」③ 池田工業(北海道北斗市)の池田龍哉社長に聞く

本紙が独自に調査報道を続けている塗装工事の中毒問題。防食関連企業を中心とする読者から反響が相次いでいるが、事業者の中には、問題の重要性をきちんと認識し、自ら対策に乗り出しているところもある。その1社、池田工業の池田龍哉社長に聞いた。

血中鉛(注)の管理を社内で徹底している。

同社は、防食に関わる作業(下地処理~上塗り塗装)を自社社員で担う。現場ごとにつかんだノウハウと技術を蓄積し、単に工事を完工させるだけでなく、防食専門会社として、地域から頼りにされるエンジニアリング力を売りにする会社―を掲げているからだ。

客先は、東日本の造船所とプラント、橋梁現場工事が各3割。保有する素地調整法として、ブラスト以外に、IH式塗膜はく離法、ウォータージェット、動力工具などを、客先に応じて多様に使い分けている。

一般に、鉛を含有した塗膜のブラスト作業中は、空気中の鉛粉じん量が多いと認識されている。

その一方で、動力工具による下地処理中は、粉じん量がブラストに比べ少量だからという理由で対策が疎かになり、血中鉛が上昇する事例も少なくない。

池田社長(48)は「法令に則った半年ごとの鉛健康診断時に、血中鉛濃度が分布2・3に該当する所見が出た作業員は、次回の鉛健康診断で血中鉛が分布1になるまで、鉛粉じんに暴露される可能性のある作業から外している。また、その作業員の血中鉛濃度がなぜ上昇したのか、理由を調査して明確にする」と話す。

同社はそのために、マスクメーカー・興研の協力の下、マスクのフィッティングチェックの講習を定期的に実施している。

マスクのフィッティングチェック

田社長はその理由に3点を挙げる。

①作業者本人が自分でマスクの破損・部品の劣化に気付くこと

②漏れのないマスクの装着を本人ができること

③同僚が鉛中毒やじん肺に罹患した時、どれだけ悲惨な状態になるか、経営者である私と社員が再確認し、意識の共有を図ること――。

「既設鋼橋の塗替えは、安全面だけでいえば、粉じん、化学物質との戦い。作業環境の改善と個人防護の徹底が最重要だ」

池田社長はそう指摘し、「会社の役割はマスクを用意して貸与するだけではない。その適切な使用を促すためのモラルと知識を、作業員に習得させなければ。そのためには、繰り返し教育する時間とコストをかけなければならない」と力説した。

(注)血中鉛  血中鉛の値 は、20㎍/㎗以下が「 分 布1」、20・1〜40㎍/㎗ が「分布2」、40・1㎍/㎗以上が「分布3」で区 分。分布1が低い方、2が中間 、 3が高い方という考え方が用いられている。

※「橋梁通信」2019年5月1日号掲載