調査報道「防食中毒」④ ヤマダインフラテクノス(愛知県東海市)の山田取締役に聞く

本紙が独自に調査報道を続けている塗装工事の中毒問題。防食関連企業を中心とする読者から反響が相次いでいるが、事業者の中には、問題の重要性をきちんと認識し、自ら対策に乗り出しているところもある。その1社、ヤマダインフラテクノス(山田博文社長)に聞いた。

山田理事

「『鉛かき落とし通達』(注)が2014年に出た後も血中鉛の高止まり状態が続く要因の1つは、受・発注者の防食工事への無理解があると思う」

同社の取締役営業本部長で、日本ン鋼構造物循環式ブラスト技術協会の山田翔平理事(31)は、そう指摘する。

同社は、道路橋向けの「循環式エコクリーンブラスト工法」を開発した。工法を共有する「循環式エコクリーンブラスト研究会」の会員は、6年余で51社と大幅に拡大し、年間15万㎡も活用されている。

山田理事は、通達以後の発注内容、施工方法、安全衛生保護具の費用計上など、「どれをみても、首をかしげる設計が多い」と指摘する。

そして、「このような状態では、血中鉛の高止まり以前に、工事発注金額もムダに上昇してしまっている。湿式工法とある程度の安全設備を採用すれば、通達を遵守しているので大丈夫という、目先の安心をお金で買っているだけと言わざるを得ない」と手厳しい。

エコクリーンクールスーツ着用の回収作業(NETIS登録)

2005年改訂の「鋼道路橋塗装・防食便覧」(日本道路協会)は、推奨する下地処理法として素地調整程度1種(ブラスト法)を標準的に採用すると変更した。

「粉じん障害防止規則(粉じん則)」に、作業者の体内に粉じんを絶対に入れてはならないという記載があることから、作業者の呼吸器を粉じん環境から隔離する措置として、安全衛生保護具の中でスペックが高いエアラインマスクの着用が義務づけられている。

「鉛中毒予防規則」(鉛則)で、現場で湿式工法の適用が「著しく困難な場合」は、サンドブラスト工法を使っても構わないと記述されているのも、高いスペックのマスク着用が前提だからだ。

エアラインマスクを装着したブラスト作業

「ブラスト法が品質面でも安全面でも最も優れているという事実を、発注者・受注者・施工者が理解すれば、LCCを求める発注者側の思いを考慮して、粉じん則・鉛則の遵守が可能な安全設備の費用計上ができるはず」と山田理事。

そのうえで、「最後はモラルの問題。どれだけ優れた安全設備を導入しても、作業者が適切に設備を使いこなせているかが重要。鉛の危険性を理解させるための教育が一番重要だ」と指摘。研究会の活動を通じて、会員同士で安全性の向上に取り組んでいきたいと話した。

(注)鉛かき落とし通達=厚生労働省・労働基準局が2014年5月30日、に通達した「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」のこと。

※「橋梁通信」2019年5月1日号掲載