橋に魅せられて TTES 菅沼久忠さん

たわみで橋の健全性――各地に広がる

小さな箱型センサーを橋の上に置いて、スイッチを押し、車を通すだけ。

こんな簡単な作業で、新設橋では動的たわみの初期値、既設橋ではたわみの時系列変化が把握できる。

たわみで橋の健全性を測る機器『INTEGRAL』を開発し、実用化した。早ければ1橋の計測が10分でできる。これまでに、浜松市や富山市などの200橋近くで活用された。

誰もやっていない領域にチャレンジしたい――。その情熱に突き動かされてきたのだろう。「一見、物静かだが、バイタリティの塊」。菅沼さんに会った人は皆が、そう口をそろえている。

静岡県浜松市生まれ。レゴブロックに夢中で時を忘れ、大きなビニール袋で足を覆って真冬のプールに入るなど、興味が湧いたことには何でも挑戦する。そんな少年だった。

二輪自動車の技術者だった父親とは別の道をと、構造・建築家を志して東京工業大学に入学。三木千壽教授(現・東京都市大学長)と出会い、新しい形式の橋を架けることを夢に描いた。

自らが橋を設計する時に困らないようにと、構造解析・最適化を研究課題に選択。修士修了後、IHIでの2年を経て、大学に戻って学び直す。

博士課程に在籍中の30歳で「TTES」を設立。構造解析には自信があったが、そもそも見積書の書き方さえ、分からなかったという。

ドクター時代からの研究の延長が、実際の大型トラス橋・鋼床版の疲労き裂を抑制するディテール解析業務に。工期が迫る中、応力集中が回避できず、形状を決め切れなかったという苦い経験、その挽回の仕方が現在に生きる。

「橋梁界の技術者が、外の技術を学んでソフト、回路などを取りまとめて開発すれば、現場で使えて、コストも下げられるはず」。その思いからノウハウを凝縮したのが『INTEGRAL』。現在、各地で想定以上の広がりを見せる。

家庭との両立に心を砕く。我が子を保育園に迎えに行き、無邪気な姿を見て、絵本を読み聞かせながら寝かしつけるひと時は、何にも代えがたい。44歳。

(代表取締役社長)

※「橋梁通信」2019年5月1日号掲載