主張(31)公共事業批判に負けないために 土木学会「22世紀提言」①

小欄はここしばらく、公共事業を巡る主要新聞の社説やコラムに注文を付け、シリーズ最後の前号を「識者と呼ばれる人たちの論調にも問題がありそうだ」と締めくくった。

(中略)

公共事業に異を唱える識者の論を点検する新シリーズを展開する予定だったが、少し寄り道する。土木学会の「提言『22世紀の国づくり』」に触れたからだ。

提言に至る端緒となった高橋博・東大名誉教授の問題提起は極めて現実的かつ具体的である。気候変動と人口減少がインフラ整備に深刻な課題を突き付けているとし、土木技術者がその重大性を認識するよう求めた。

そうした経緯からすると、提言が抽象的で、やや精神論に傾いているのは否めない。キーワードの一つは「幸せ」だが、人の数ほど意見がありそうで、「議論をし、積み重ねて」も、そう簡単に着地できるとは思えない。

議論に時間をかけているうちに、それこそ国難級の巨大災害に襲われかねない。

そうした懸念を払しょくするために「行動」を示したのだろうが、これも抽象的な印象がぬぐえない。「戦略的再構築、長期的な国土形成ビジョンを持つ」のはもちろん必要だが、何をどうするのかという具体的な方法論が見えない。現状では、目標の位置付けだろう。

提言への率直な感想を述べたのは、それを否定するためではない。価値を認めないなら、別掲のように大きな記事で取り上げたり、小欄のシリーズ計画を変更したりはしない。

そうではなく、提言が今後、速やかに、かつ大きく育つことを切に願う。提言をまとめたプロジェクト委員会の沖大幹委員長も述べたように「提言は答でなく発端」だからだ。

発端とは、大樹の芽ともいえる。芽を大きく育てないと、

(以下、略)

(全文は「橋梁通信」2019年6月15日号でご覧ください)