主張(34)国家の力は地方に存する 土木学会「22世紀提言」④

政治評論家の森田実さんは講演や寄稿で国家、社会を論じる時、徳富蘆花の言葉をよく引用する。「国家の実力は地方に存する」と。

地方を見れば国家の力が分かるという趣旨は分かりやすい。ただ、蘆花はざっと百年前の小説家だし、最近その名を聞く機会も少ないので、どんな文脈で出た言葉なのか確かめるため、古い全集を引っ張り出した。

「思出の記」という作品にある言葉だ。19年ぶりに故郷に帰った主人公が宴席で挨拶した時に、そう語った。

なぜ、そうしたセリフが飛び出したのか。答は前段にあった。

「大川にペンキの橋がかかって」と、帰省した主人公は驚いていたのである。

そして、「大変道がよくなったではないか」という会話もあった。「凸凹(でこぼこ)の石みちは、今砥(と)の如き県道となっている」というのだ。砥は「砥石」の砥である。

主人公は故郷のインフラ整備が進んだのを見て、「国家の実力は」と思い至ったのだった。なるほど、地方のインフラ整備をきちんとできるか否かに、国家の本当の実力が透けて見えるのである。

小欄の今シリーズは、地方で橋がなくなり、あるいは存亡の危機にあると伝える報道が相次いでいると指摘してきた。蘆花が今日の日本を見たら、何と言うだろうか。

そうした状況に立ち向かうため、土木学会「22世紀の国づくり」提言を大きく育てたい。公共事業の正当性と必要性を明確にし、国民の理解と支援を得なければ、社会基盤の整備が進まないからだ。

その提言をまとめたプロジェクト委員会の委員13人が、提言の末尾にメッセージを寄せている。

(後略)

(全文は「橋梁通信」2019年8月1日号でご覧ください)