橋に魅せられて 日本ミクニヤ 岸川英樹さん

点検とは「観る・診る・看る」だ

振り返ると転機は8年前、福井県内でPCポステン桁に橋軸方向の亀裂を見たことだった。

変状はなぜ起きたのか。点検マニュアルにはなかったが、鉄筋探査後、ボーリングし、ファイバースコープを入れて調べたら、当時はまだ解明されていなかった「PCグラウトの充てん不足」が原因だった。水が浸入してPC鋼材が腐食し、コンクリートが膨張したのだ。

点検に対する認識は大きく変わった。「マニュアルに準じた点検だけでは不十分だ」。そこには、最低限のことが書かれているだけ。とりわけ市町村の橋には地域特性もあって千差万別なのだから。

大阪府立大学で船舶工学を学んだ。折からの造船不況もあって、海洋とインフラ系の測量・調査会社、日本ミクニヤに1997年入社。仕事の主力は次第に橋梁に移行し、2014年に定期点検が義務化されると受注量は格段に増えた。防災部門を含め、社の売上の6割を占めるまで成長した。昨年10月から現職。

この間、数多くの現場で知見やノウハウを蓄積するとともに土木の勉強に挑み、コンクリート技士、コンクリート診断士、技術士の資格を次々取得した。

そして今、ひとつのポリシーを持つ。点検とは、「観る・診る・看る」だ。

「まず構造物全体を観察する。そこから劣化の原因を推理して診断。補修設計に使えるデータを集め、正確に看護できる点検調書を作る」

経過観察や詳細調査の必要性を含めた提案も忘れない。誤った点検と診断によって実状にそぐわない設計が行われ、工事業者を悩ませたり、意味のない補修になったりする恐れがあるからだ。

点検の際は、業務外ではあっても、できる限り橋を清掃する。支承周りなどをきれいにすることで、見えてくる劣化要因もある。「何より、橋を利用する住民のために」。

社内の人材育成にも力を注ぐ。土木知識と現場技術の両輪。「技術者マインド、つまり地域の人の命、生活、財産を守る使命感を持つことが大切。日々、コンクリートをたたくだけでは技術者としての成長が遅れてしまうので」。

妻と娘2人を大阪に残して単身赴任。ドラマや映画の鑑賞が息抜きだ。44歳。

(執行役員 東京支店長 兼 名古屋オフィス所長)

※「橋梁通信」2019年8月15日号掲載