主張(37) 36年前の本に「既視感」とは 「荒廃するアメリカ」を読む①
「荒廃するアメリカ」という本の「はしがき」は、「アメリカにおける公共施設は、維持・管理をないがしろにされたまま、日々脆弱化の度合いを強めている」と始まる。
36年前の出版だが、インフラの老朽化とそれに伴う問題点を鋭く指摘した。我が国が後を追うように同じ問題に直面している今日、もっと読まれていい本だ。
連邦政府の研究員らが著し、旧建設省の若手職員が翻訳、岡野行秀・東大教授(当時)が監修した。
各種インフラの現状紹介の中に、こんな一節がある。
「合衆国内の橋梁は、5つのうち1つの割合で大掛かりな修復か架け替えが必要である。交通省は、これらに要する費用を330億㌦(7兆2600億円)程度と見積もっている。しかし、1981年度連邦道路予算においては、わずか13億㌦(2860億円)が橋梁補修に割り当てられたにすぎない」
長い引用になったのには、理由がある。
(中略)
つまり、先に引用した文章は、「危険な橋はいつまで経ってもなくならない」と言っているに等しい。筆者は単に予算が少ないとクレームをつけているのではなく、大規模修繕・架け替えのサイクルが成り立っていないことを指摘しているのだ。
そんな感想には「既視感」がある。同じような構図があった。国土交通省が8月に公表した「道路メンテナンス年報」のことである。
(以下、略)
(全文は「橋梁通信」2019年9月15日号でご覧ください)