橋に魅せられて 大日本コンサルタント 松井幹雄さん

後世に価値あるデザインで

構造の成立ちをベースに、見た目と機能とストーリーを紡いで橋をデザインするのだという。

「なんとエレガントな橋なのだろう」

橋の設計を学びたくて大阪大学大学院に進んだものの、なかなか道を見出せずに悶々としていた頃、大学図書館でふと手にした本に、その写真は載っていた。スイスのマイヤールの傑作・テスの人道橋。床版もアーチリブも極めて薄い優美な姿に、「こうした橋を設計したい」と思った。

翌年にバックパッカーとして巡った欧州の橋々。著名な橋にも魅せられたが、「街中の何気ない小さな橋にまで、設計者の思いが行き届いた美しさ」にひかれた。

だからなのか、各務原大橋(岐阜県各務原市)、天城橋(熊本県)、そして築地大橋(東京都)と、近年手掛けた橋が立て続けに土木学会田中賞に輝いたが、振り返ると、小さな橋への思い入れも深い。

ある駅前デッキに携わった時は、「デッキという道具の使い勝手をとことん考えた」。空間が移動のためだけでなく憩いの場としても機能するよう、地面から生育したケヤキの樹冠が影を落とす位置にベンチを配した。

階段や斜路の勾配に悩んでいた頃には、ユニバーサルデザインと出会った。車いすの人や全盲の人と一緒に歩道橋を体感し、自ら疑似体験をして、使い勝手を追求。「形だけでない、機能の魅力」を考える習慣が身に付いたと思う。

そして、ストーリー。橋がなぜそこに建設されるのか、歴史や社会の背景、地形や気候条件、最新技術の動向、志のある人物の存在、そういった物語を紡ぐことが、橋の形を考える上で欠かせないという。

ストーリーとはつまり、意味、あるいは文化。時間軸も入ってくる。「橋は履歴に重みが出て来ると、文化になる。文化を通して、お国柄も見えてくる」。

見た目と機能とストーリーを紡ぐ道具も常に意識してきた。「模型をいじりながら手で考えることをベースに、80年代から、当時はまだ珍しかった3次元CADを使いこなし、前処理プログラムを自分で作ってパースも描いてきた」。

見出した道の先での田中賞連続受賞。「関係者全員の成果。個人としてもうれしいけれど、まだ通過点」とほほ笑んだ。大阪府出身。59歳。

(執行役員 経営統括部 経営企画部 部長)

※「橋梁通信」2019年9月15日号掲載