熊本豪雨からの復旧 ③ インフラドクター担当 永田部長が振り返る

「早急に」「やります」 8月はあっという間に

「令和2年7月豪雨」で大きな被害を受けた熊本・球磨川流域で、早期復旧に活躍した首都高技術(東京都港区、大島健志社長)の「インフラドクター」()。その担当部長である永田佳文さんが、当時を振り返る。      

インフラドクター

 GIS(地理情報システム)と3次元点群データを活用し、インフラ・構造物の維持管理を支援する新システム。

特徴は、①現地に行かなくても室内で即座に現場状況を確認でき、インフラ管理の省力化を実現②管理者のニーズに合わせて、管理・点検結果台帳などの検索システムをカスタマイズ可能③図面作成、舗装や壁面の変状検出、3次元シミュレーションなど各種の拡張機能で、維持管理業務を高度化――など。

 

2020年7月30日。就寝しようとしたら、携帯電話が鳴った。国土交通省九州地方整備局からだった。

永田部長(左)と安中次長(写真はいずれも首都高技術提供)

「被災した国道219号の災害復旧用に、3次元点群データを早急に取得して欲しい」。切迫した様子が伝わる声に、「やります」と即答した。

まずは現地の被災状況を把握しなければならない。「なんとかしなければ」。そんな強い思いを込めて、メディアはもちろん、ツイッターなどSNSの情報も徹底的に調べ続けた。

気が付いたら、翌朝5時。すぐ出社し、MMS(モービル・マッピング・システム)や技術者の手配など、体制作りを急いだ。

翌日からの8月1、2の両日は土・日だったが、もちろん休日返上で計画書を作成し、現場へ向かう準備を整えた。最大の難関は、宿泊先の確保だった。

やっと見つかったのは、現場から離れた場所。しかも、路面温度が47度にも及ぶ猛暑のさなか、宿泊先に冷蔵庫がなかったのは「正直、かなりのショックだった」。

現地では、とにかく早期にデータを取ることだけを考え、早朝から日没まで走り回った。

地震後の現場を見たことはあったが、水害は初めてだった。背よりはるか上に、ゴミが残存している。「言葉にならなかった」。インフラ基盤を破壊してしまう自然の怖さを目の当たりにした。

「自分自身が少しでも力になるなら、とにかく頑張ろう」

そんな思いで、安中さんと共に昼は現場、夜は資料作成という日々を重ねていたら、あっという間に8月は終わっていたという。

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インフラドクター部 安中智次長の話「3次元点群データで被害状況を記録・把握する業務で、長距離の計測に適したMMS選定等、様々な工夫を行った。現地は被災直後、流出した橋梁や通行止めエリアが数多くあったりして、MMSの走行に時間を費やしたが、可能な限り、時間を有効に使った。球磨川と国道が並行していないなど、MMSで計測が不可能な箇所は、UAV、固定レーザーによる代替方法を立案。延べ231人を動員し、昨年11月にデータ取得を終えた。災害復旧を検討中の測量・設計会社に利用されている」

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インフラドクターは、17年度に運用を開始してから適用範囲を年々広げてきた。道路構造物のほかに、鉄道構造物と駅舎(建築物)、空港、そして今回、被災した河川が加わった。

以前から「災害調査と山中での計測も可能と考えていた」(永田さん)ところ、今回の業務で、災害調査でもこれまで通り図面上で求められた精度=シャーペンの芯1本分の太さ(500分の1)の誤差=に対応できた。それは、あらゆる構造物に使えることを意味した。

「首都高だけでなく、国内に限らず、インフラを守りたい」。一貫した永田さんの方針だ。「インフラドクターが、どんな構造物にも使えるという自信を深めた。引き続き広く世の中に役立てたい」と強調した。